光の幻想

□梵 瑠紫様
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テーブルに近付いた時、見慣れた白髪が見えた。
 
テーブルに寄り掛かって寝ているのかもしれない。
 
それならば早く起こさなくては、風邪を引いてしまう。
 
そっと近付いて、肩に手を伸した。
 
 
 
 
「……白が…、……!!!!!???」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
白銀が――――、
 
 
 
 
 
血まみれで倒れていた。
 
 
 
「白銀っ!!」
 
肩を揺さぶる。
 
起きる気配がない。
 
「白銀!!目を開けてくれ!!」
 
どんなに呼んでも、反応しない。
 
……白銀、目を開けてくれ。
 
 
 
 
 
 
 
「っ…ぁ……、りゅ………?」
 
「!!!??…白銀!?」
 
願いが通じたのか、僅かながらに白銀が目を開けた。
血の気が失せ、ただでさえ白い肌が、更に白くなっている。
 
「白銀!!大丈夫か?一体何が……!!」
 
「………こ…、」
 
「………白銀?」
 
白銀は弱々しく手を伸して何かを探していた。
私はその手を迷わず握った。
 
 「……りゅ…こ…?」
 
「あぁ、私だ白銀。」
 
そう言えば、僅かに緩んだ頬。
 
「白銀…?一体何があったんだ……?」
 
「…………。」
 
「……白銀?」
 
「………び……」
 
「……え?」
 
「…ほ……む…ら…び………、ま…の……せか…い。」

 
………焔緋、私の世界…?
 
「白銀、焔緋にやられたのだな?一体何故?」
 
「…………っ、…かはッ、」
 
「っ!?白銀!!」
 
大量の血が、白銀の口から溢れでた。
 
「…は…っ……。」
 
「白銀、今祀翠の所に連れて行く!!だからもう少しだけ頑張ってくれ、」
 
「ま…て、劉黒。」
 
「…………。」
 
「…聞け、よ……?ちゃんと………。」
 
「…あ、あぁ」
 
「……悪い、先…逝く…。」
 
「……そんなことを言わないでくれ…!!私はお前が居ないと駄目なんだ!!早く祀翠の所へ…、」
 
「…無駄だ、……も、……遅ェ…よ……。」
 
「だから、そんなことを…!」
 
「また…逢える、」
 
「…、………白銀、何を……?」
 
僅かに微笑んで、白銀は手を翳した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
――我は万物の調律者。
 
 
 
 
 
唱え終わったと同時に、白銀の身体が淡く光り世界と同化し始めた。
 
 
「……じゃ、な…?劉…黒……。」
 
「…白銀、……待ってくれ………。まだ、話したいことが…」
 
「あっちで…、待ってる、」
 
「っ…………。」
 
 
決意を秘めた青い瞳。
 
 
「……劉黒……、
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
愛してる…ずっと…。」
 
 
 
 
 
 
「………白銀。」
 
 
腕の中に居た筈の白銀は儚く消えた。
 
 
最後まで、笑っていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
私はゆっくりと立ち上がる。
 
そして、空を見据えた。
 
 
 
立ち止まってる暇はない。
 
 
悲しみに浸っている暇などない。 
 
 
 
 
探しに行こう。
 
 
人の世へ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
きっと、私を待ってくれている。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
白銀の因子を受け継ぐ人。
 
 
 
 
 
必ず、見つけて見せる。
 
 
 
 
 
 
 
焔緋の力により光が遮断される前に、私は、自分の世界へと帰った。
 
 
 
 
これから起こるで在ろう………、事態を予感しながら。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
開幕の狼煙は上がった。
 
 
 
 
 
 
―――END    おまけ→
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