光の幻想

□梵 瑠紫様
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突然の別れに、しばらく佇んで考えていた。
 
………追いかけよう。白銀を
 
私は、光を去った影を―無我夢中で追いかけた。
 
 
 
 
 
 
私の側から白銀がいなくなるなんて考えたくない。
 
いや……、考えられない。
 
 
私は白銀が側に居ないともう駄目なんだ。
 
いなくならないでくれ…、
 
私から…、離れないで。
 
お願いだ。
 
 
 
 
 
「…待ってくれ、白銀っ!!!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
白銀の屋敷の庭園にある青い薔薇が咲き誇る暗い薔薇園の迷路。
 
 
その中を私達は走り回っていた。
 
白い影が角を曲がる。
 
迷わず私も、その影の後を追う。
 
 
角を曲がる際、手が届きそうになる。
それでも届かず、すぐに影は曲がってしまう。
 
どんなに追いかけて手を伸しても、私の手は空中を舞う。
 
どんなに伸しても―、届かない。
 
手は宙を舞う。
 
 
 
 
 
 
 
………………おかしい…。
ふと、そんなことを思ってきた。
 
 
 
 
白銀は、こんなに足が速かったか…?
 
いや……、…速かったな…。
 
でも、何かが違う気がする。
 
今もまた、角を曲がる前に手を伸したが…、届かない。
 
………何より…、今気付いたが……。
 
角を曲がってから約100m、と行った所か……?
 
曲がってから、白銀の姿が見えない。
 
 
…………ならば、何故私は
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
角を曲がる時、白銀が見えるんだ……?
一瞬で、次の角になど…行ける筈がない。
 
 
今もまた、角を曲がる際影がいた。
そして、私が角を曲がれば―――もう、居ない。
僅かに見える影の位置は次への角
 
 
 
 
 
 
 
 
………なんだ?
 
 
 
 
 
妙に胸騒ぎがする。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
胸に宿る違和感を抱き、また影を追いかけた。
 
 
 
 
 
 
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