上×一は

□深く落ちて
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深く、深く、君を想うこの気持ちが、落ちていく。




深く落ちて




「小平太」


は、とする。


目の前には黒装束に身を包んだみんながいた。
仙蔵が私の名を呼んだらしい。

口元まで隠されていて表情は分からないはずなのに、不機嫌な顔に見えた。

月明かりで仙蔵の目がキラ、と光った。


「これから敵地に忍び込むのに…まだ、」

「大丈夫だ」


そうだ。
今から、実習だ。

気を取られていたら、大怪我も免れない。


「…なら、いいが」

「しかし、遅刻は許されんぞ」


しぶしぶ、と納得する仙蔵の横で、文次郎が厳しく言い放つ。

あれから、二人が去るまで息を殺して留まっていた。
そうしないと、今にも叫びだしてしまいそうだったから。

気持ちが落ち着くまで、じ、としていたのだ。

だから、遅れてしまった。


「とりあえず、急ごう」


場を引き締めるように伊作が言った。


私も頭の中のごちゃごちゃを振り払うように、ぱし、と頬を叩く。


それを静かに見ていた長次を、そのときの私は気付かなかった。
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