上×一は

□貴方を拒絶して
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貴方を想う気持ちに気付かないで、拒絶してしまう。




貴方を拒絶して




ぼくはなにができるのかな。

七松先輩になにかしたい。

そう思うのに、なかなかいいものが思い浮かばない。


「金吾、大丈夫か?」


滝夜叉丸先輩が覗き込むようにして、ぼくに言う。

ぼくは慌てて、はい大丈夫です、と答えた。
今は朝の委員会の最中であることを思い出した。

しかし七松先輩はいない。


「そうか…、まぁ、七松先輩がああなんだ、仕方ない」


そう言って、ふぅ、と息をつく滝夜叉丸先輩。
長い髪をさら、と手で払う。


「私たちに何かできたらなぁ」

「ぼくもそう思ってました」


ぼそり、と滝夜叉丸先輩の言葉に驚きながら、ぼくは言った。
滝夜叉丸先輩も同じ顔をしながらぼくを見た。


「そうか、金吾もそう思っていたか」

「はい、ぼくになにかできないかなぁって」


滝夜叉丸先輩はうーん、と考えこんで、搾り出すように言葉を口にした。


「…裏々山に薬草があって、それが傷によく効くらしい」

「え、本当ですか?」


ぼくが眼を輝かせながら、その話に食いつくと、滝夜叉丸先輩はもっと険しい顔をした。


「しかし、とても取りにくい場所にあるのだ」


取りに行って帰るまで、深夜になるという。

だから、保健室にもない。


滝夜叉丸先輩は腕を組んで、他に何かないかなぁ、と呟いた。


「滝夜叉丸先輩、取りに行きましょう!」


ぼくは居てもたってもいられなかった。

傷が早く直るというなら、それにこしたことはない。


それに、ぼくがあのとき悪化させたようなものだ。

それを直す方法があるというなら、それをしてあげたい。


ぼくの必死な姿に圧倒されたのか、滝夜叉丸先輩もわかったと了承してくれた。

その話を同じ委員会の次屋先輩と時友先輩にすると、ぼくたちも行きます、と言ってくれた。


こうして、四人で裏々山へ薬草を取りに行くことになったのである。
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