上×一は

□どうか伝わって
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どうか君を想う、この気持ちだけでも伝わってくれ。




どうか伝わって




頬に何か温かいものが触れた。


すごく心地良い。


ずっとこのままでいたい、と思った。


まるで太陽の光を浴びているような、そんな気分だ。



誰かいるのか?



重たい瞼を開けると、小さな人影が見えた。

私の隣にいる。


驚いた。


「…、金吾?」


そこには金吾がいた。


私の愛しい子。

愛しくて、愛しくて、堪らない。


姿を見るだけで、胸が躍る。

気分が高揚する。

心が温かくなる。



温かい何かは金吾の手だった。

その手が、さ、と離れていく。少し名残惜しかった。


その代わりに、草がたくさん入った籠を私に見せるように、傾けた。


「七松先輩、あの…これ」

「なんだ、これは?」

「薬草です。止血効果があるそうですが…まあ、傷薬ですね」


そう言って、金吾は笑った。


私のために、薬草を採りに行ってくれたのか。


その黄色の花を付けた薬草。前に伊作が持っていたのを思い出す。

確か、ここから遠い場所に生息している、と聞いたが…。


私のために…、金吾が。


あまりに嬉しくて、思考が止まった。



駄目だ、我慢できない。

自分を抑えてられない。


私のものにしたい。

金吾が欲しい。


誰もいない。

あの人もいない。



今は


この瞬間は


私だけのもの。
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