上×一は

□逃げられない、逃がさない
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逃げようにも逃げられない、どうしたって逃げられるわけがない。

絶対、逃がさない。




逃げられない、逃がさない




「金吾」

「ふぇ?」


突然名前を呼ばれ、後ろを振り返る金吾。

が、ぐりん、と強い力で首を横に回された。


「こっちだ、金吾。相変わらず鈍いなァ」


そこには、草むらから上半身を出している小平太の姿があった。

にこにこ、と笑顔全開である。


「七松先輩!」


金吾は驚くがいつも、こういう風に呼ばれているため多少は慣れているようだ。

首を捻ったのか、片手で抑えているが。


「金吾、下の名前って言っただろ?」

「え?えっと、…小平太先輩」


顔を若干赤くしながら、たどたどしく言う金吾に笑みを深くする小平太。

そしてそのままぎゅ、と金吾を抱きしめる。


こんな往来で!と金吾は思ったが、あまりの力の強さに声も出なかった。


「やっぱり可愛い」

「…」


金吾の顔が今度はぼん、と効果音が聞こえてきそうなほど真っ赤に染まった。

十分堪能したのか、小平太は金吾を抱きしめる力を緩めた。


「そう、今夜委員会を開くと伝えに来たんだ」

「い、委員会ですか?」


上を見上げる金吾。
自然と上目遣いになる。

小平太はその姿ににへら、とした。




「いいか、金吾。今日は縄抜けの講座を開く!」


金吾はぽかん、とした後ええ?!と叫んだ。


「縄抜けの講座?ぼく嫌です」

「なに、泣き言言ってんだ。忍者が縄抜けぐらい出来なくてどうする!」


小平太はそう言って、金吾の頭をぐりぐりと撫でた。
その力が強すぎて、ぷしゅう、と煙が立っているのが見える…。


「じゃあ、伝えたからな!絶対、来いよー。金吾!」


小平太は金吾の頭に軽くキスをすると、颯爽と走っていった。


「どうしよぉ」


キスされた頭を摩りながら、金吾は色んな意味で泣きそうになった。
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