上×一は

□捕らわれ、囚われ
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この体はもう、捕らわれている。
この心はもう、囚われている。




捕らわれ、囚われ




六年ろ組、体育委員長の七松小平太はざっざ、と歩いていた。


すると、曲がり角付近で金吾の声が聞こえた。
顔がにやけるのが分かる。

忍びたるもの、感情を表に出してはいけないのだが、これは仕方がない。


飛び出そうと、地を蹴るがもう一人の存在に気付きさっと身を潜めた。


ちらり、と覗くとそこには金吾と、戸部新左エ門先生がいた。

武士の家の子である金吾は先生の弟子でもあるのだ。


何をしているんだ…?


出るタイミングを完全に失った小兵太はその場に身を潜めて、その二人の様子を伺った。

「戸部先生!今度はいつ稽古してくれるんですか?」
「そうだな…今週当たりにしようか」

ゆらり、と揺れながらしゃべる新左エ門。
金吾はその言葉ににっこりと笑っていた。


「分かりました!」


えへへ、という風に幸せそうに笑う金吾。



「……」


小平太の中で何かが崩れ落ちた。


新左エ門と別れた金吾に後ろから近づく。


金吾は小平太に気付き、後ろを振り返った。



「あ、小平太せんぱ…っ」


小平太から発するどろどろした気に当てられ、その場に崩れ落ちる。


どさ。


「金吾…」

上から見下ろす小平太の目線。
金吾は、は、は、と短く息をする。呼吸困難に陥りそうだった。


言葉がしゃべれない。

目も開けていられない。


最後にふわ、と浮遊感を感じ、金吾の意識は遠のいた。


小平太は意識を失った金吾を持ち上げ、頬にちゅ、とキスを落とした。



ドロ、とした感情が溢れ出す。



「金吾は私のモノだ」
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