上×一は

□そうして、私は手に
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そうして、私はあなたの身体を手に入れる。




そうして、私は手に




ただ、その笑顔が好きだと思った。

とても、かわいくて、滝とは違った。

その純粋さが、その幼さが私を癒した。


でも、私はそれに気付いてなかった。


ただ、金吾に惹かれていたことに。


「ごめんなさい…」


あの眩しい笑顔はそこにはなく、小さな両手が顔を覆い隠していた。
その手から何粒も雫が落ちる。


「ごめんなさい」


先ほどから、この言葉しか言っていない。


「金吾…」

「好きになってごめんなさい」

「金吾」


名前を幾ら呼んでも、その顔を上げてくれなくて。

悲痛な涙声が部屋に響く。

私はその小さな存在を抱きしめながら、きらり、と光る涙に見惚れた。


とても、綺麗な。


金吾を抱きしめていた腕を解く。
そして、金吾と向き合うようにして、しゃがんだ。


「金吾、私を見ろ」

「…ごめんなさい」


金吾はひたすら顔を隠して、泣いた。


「でも、ただただ七松先輩を好きでいることを許してください」


金吾、お前。

私と滝が恋仲だと思っているのか。


だから、こんなに泣いて。

謝って。


今まで感じたことがない痺れを全身に感じた。


ぞくり。


「金吾…」


「好きになってごめんなさい」


ぽろぽろ、ぽろぽろ。


「好きでいてごめんなさい」


ぽろぽろ、ぽろぽろ。


「お願いします。ただ好きでいさせてください」
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