上×一は

□なんにも、本当に
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なんにも、私は本当になんにも知らなかった。




なんにも、本当に




小平太先輩に抱かれて、一週間が経った。
ぼくはまだ、滝夜叉丸先輩の代わりなんだと、思っていた。



悲しくて、苦しくて。

でも、嬉しくて。



ぼくは期待と不安を持ちながら、小平太先輩の部屋に毎晩行った。


小平太先輩の体力はぼくから見たら、底なし沼のようだった。

六年生の授業は危険が付きまとって、精神がすり減る物ばかり、だと聞いた。
それなのに、小平太先輩はその授業をこなし、そのあとの委員会もやってのける。


そして、ぼくを…抱く。


「…っ、」

「おい、金吾。聞いてるか?」


間近に小平太先輩の顔があって驚く。
そうだ、今委員会中だった。

また、思考が飛んでた。

最近よくあって、困ってる。
このどうしようもない、自分に。


「き、聞いてます」

「金吾、委員会終わったら、私の部屋にこい」

「…は、はい」


ま、またやった。

小平太先輩の顔が怖くて、見れない。
また、足手まといになった。
絶対、怒られる。

ぼくの場合…お仕置きされちゃうのかな…。

ぶる、と身震いする。


「別にそこまでしなくとも良いでしょう、七松先輩」

「滝」


ふぅ、と息を吐きながら、ぼくたちの間に入ってくる滝夜叉丸先輩。
半分、ありがたくて、半分、嫌だ、と思った。


複雑な気持ち。

気持ち悪い、自分が。
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