上×一は
□私、貴方、ふたり
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言ったのは私、誘ったのは貴方、最後はふたり。
私、貴方、ふたり
身体が思うように、動かない。
手足が重くて、まるで、鉛みたいだ。
でも、それでも、
あの人に会いたい。
触れたい。
ぼくは小平太先輩が好き。
「金吾ー!」
「滝夜叉丸先輩…」
「顔色が悪い…寝てないのか?」
滝夜叉丸先輩の指がぼくの瞼に触れる。
ぴく、と身体が動く。
滝夜叉丸先輩には悪いけど、小平太先輩以外にあまり触れて欲しくなかった。
小平太先輩の感覚を忘れてしまいそうだから。
「いえ、少し身体が怠いだけです」
「今から、走るのに大丈夫か?」
「はい」
心配そうな滝夜叉丸先輩の顔がぼくの目に張り付いた。
本当はもう、走る力も残ってない。
最近、毎晩、何回も。
小平太先輩に求められるのは、もう麻薬と同じで。
ぼくの体力が削られても、ぼくは欲しい。
委員会や生活に支障が起こっていても、こう思うぼくは、壊れてしまったのかもしれない。
それほどまでに、ぼくは小平太先輩が好き。
「あまり、無理するな」
滝夜叉丸先輩の声が優しく、ぼくの身体に響いた。
にこ、と笑って、こくん、と頷いた。