上×一は

□どうか伝わって
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「ぃや、なん…ぅ、あっ」

「金吾、」


金吾の行き場のない思考が声になって表れる。

声をあげてないと、自分が壊れてしまう、そんな感じだった。


まさか、こんなところに指を突っ込まれるとは思いもしなかったのだろう。


指をぐる、と動かすと金吾の腰が大きく揺れた。

もう一本入れる。根元がきゅ、と締まった。

金吾が耐えるように、目をぎゅ、と瞑った。
また涙が落ちた。


「やめ…、て…抜いて…、お願いっ」

「ごめん、…」


私は指を抜いた。金吾が不思議そうな顔した。希望を持った顔だった。


今なら戻れる。

今なら、前の先輩、後輩の仲に戻れる。


「七松、先輩…?」


金吾がこちらに向き、俯いた私の顔を覗こうと私を仰ぎ見る。

私は金吾を抱き締めた。


泣いて、赤く腫れた目元。


心配そうな顔で、私を見た。


どうして、私じゃないんだ、金吾。

私を見てくれ。

私を好きになってくれ。


私だけ。


今なら戻れる。

今なら、前の先輩、後輩の仲に戻れる。


そして、金吾が私を見てくれるように頑張れば良いじゃないか。



しかし、私はそれを選ばなかった。

あの人には適わない。



あの切ない声には。

あの慕う想いには。



適わない。



誰かのものになってしまうのなら、初めてが欲しい。



金吾の初めての人になりたい。



私は熱を持って張り詰めた自身を金吾のそこへ宛がった。

金吾の顔が恐怖に染まる。


絶望に満ちた顔だ、と思った。



金吾、ごめんな。



そして、すぷり、と挿入した。



金吾の声にもならない悲鳴が体を通して聞こえた。
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