上×一は

□愛しい貴方、艶やかな君
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翌日。



喜三太の言った通り、金吾の隣に立っている男の人が。
一年の子はじっと穴が開くほど見つめた。


「皆本先輩、その人誰ですか〜?」

「この人はこの忍術学園の卒業生で…」
「七松小平太だ!よろしくな!」


ぐりぐり、と一年の頭を撫で回す小平太。

ぷすぷす、と煙が上がっているのが見えるが、きっと気のせいだろう。


「七松、さん?」

「小平太で良いぞー」
「小平太さん!」
「そうだ!」


にっこりと笑顔になる小平太。
それにつれられて、一年の子も笑顔になる。


そのほんわかした雰囲気に金吾の頬も自然と緩む。


「小平太先輩は元体育委員長だったんだぞ?」


一年の子と同じに目線になって、話す金吾。


「そうなんですか?」
「おー!私が六年のとき金吾が一年でなー」


小平太も膝を折って話し出す。


「昔話は止めてくださいよ」
「良いじゃないか、減るもんじゃないし」


無理やり話し出す小平太の横で押し黙る金吾。
しかし恥ずかしいのか若干頬が赤い。


「金吾は甘えん坊で泣き虫だったなー」
「え?!」


小平太の話に逐一驚く一年。

話が濃くなっていく一方で金吾の顔の赤みも段々と増して行った。


すると、金吾の方をすっと見た一年が何かに気付いた。


「皆本先輩、首の赤いのどうしたんですか?」
「!」


虫に刺されたんですか?と、ずい、と覗き込む一年。

金吾は反射的に片手でがばと指摘されたところを隠した。


「いや、これは…!」


どう言おうか、と助けを求めるかのように、小平太の方を見る金吾。

しかし、小平太はにやにや、と楽しそうに笑っているだけだった。


「ケガですか?」

「ケガではないんだけど…」


次々に言葉を否定する金吾に段々と不安になっていく一年。

一年の心配の念が篭った目線に、言い訳の言葉が思いつかなくなる金吾。


それを見兼ねて小平太は、さらり、と言った。


「これは私が付けた」


呆ける一年と金吾。


「こ、小平太先輩?!」


ぼ、と頬が茹タコのように赤くなる金吾。

一年はある考えにたどり着いたのか、顔を恐々とさせて、金吾に詰め寄った。


「え!け、ケンカですか…?」
「いや、ケンカって訳でも…」


後輩に詰め寄られて、動揺する金吾。


「ケンカはだ、だめですよぉ」
「心配するな!これは仲が良い証拠だからな!」


すると、小平太が満面の笑みで一年に言った。


合ってはいるが、良いのか、それ。


「な…ッ!」

「仲が良い?」

「そうだ。な、金吾!」
「え?!…は、はぁ」


そんなやり取りをしている体育委員会を遠くから見守っている喜三太。


「微笑ましいねー」


にっこりと笑って、一人呟いた。



貴方と居られるこの時間が愛しい。




end

20080917 執筆
20081015 公開
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