上×一は

□悲し、愛し
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ぼくたちは小平太がそういう関係を滝夜叉丸と結んでいることは知っていた。
小平太はそういうやつだって、知ってたから。

しょうがないと思ってた。

それでも、ぼくは反対だった。

好きでもない人とそういう関係になるなんて。


でも、金吾を見つめるこの小平太の顔。

まるで…


「これからどうするの、」

「滝とは断ち切るつもりだ、あいつにも無理させてるみたいだったし」

「滝夜叉丸は君を同情してたんだよ」

「同情?」


一回、あの子を説得したときがあった。
それでも、悲しそうにそれではあの人が可哀想だ、と言ったのだ。

私はあの人の後輩なのだから。

そこまで、背負う必要があるのかどうか分からないけれど、一種の義だと思った。

だから、もう口を挟むのはよそう、と。

でも、この関係もいつかは切れるのだ。


「あの子にも思っている子が居ただろうに…」

「そんなことは、とうに知ってる」


眉間に皺を寄せる小平太。
苦しそうだった。

いつから知っていたのだろうか。

知ったとき、どう思ったのだろうか。

裏切りか、それとも置いてかれたと思ったのか。

ぼくには分からなかった。


「それなのに縛ってたんだね」

「どうしてだか、私も分からん…でも、金吾には何かを感じるんだ。この子なら私を満たしてくれそうな気がして」


その顔には愛しい、と言わんばかりの想いが溢れていた。

君はまだ気付いてないのか。

まだ、愛を知らない君。


「そう、でもあまり無茶させてはいけないよ」

「…ああ」

「小平太、金吾は一年生だよ。まだ十歳なんだ。こんな行為も知らない」


それなのに、小平太が好きな金吾。

行為も知らなかったはずなのに、小平太になら、何をされてもいい、と思ったのかな。

悲しい。金吾が可哀想だよ、小平太。


「そうだな、肝に銘じておく」

「ともかく、寝かせよう」


これから始まるであろう、金吾の苦しみ。
小平太が気付くまで、続くであろう苦しみ。

人に言われたって、君は気付かない。

自分から気付かないと、意味がない。

だから、今は休ませてあげよう。

小平太の顔がどこか憂いを帯びていたことをぼくは見逃さなかった。
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