上×一は
□悲し、愛し
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一瞬で先ほどまで行われていたであろう行為を思い起こす。
交わる熱い身体。
息。
言葉。
そして何よりもあの人が。
かぁ、と一瞬のうちに顔に熱が集まった。
どこまでも鮮明なその映像が、夢なのではなく、現実なのだ、とぼくは自覚した。
小平太先輩が好きなんです。
ぼくの口から漏れ出た、言葉。
それが今までの関係を崩し、今新たな関係が成り立とうとしている。
それはぼくが望んでいた関係とは重なるようで、重ならなかった。
それでも、小平太先輩の近くにいれるのなら、ぼくは。
この関係でもいい、
と思った。
横に服が丁寧に畳んで置いてあった。
それに着替えるために寝衣を脱ぐ。
自分の肌を見て、驚いた。
そこには無数の口吸いの痕。
真っ赤に咲く小さな花が散りばめられていた。
「…っ!」
見られたら、大変だ、と熱くなった頭で考える。
すぐさま、身支度を整える。
襟から、ちらちら見えるが、仕方ない。
蚊に噛まれた、とでも言うしかない。
痛い腰を支えながら、その場を後にした。