上×一は

□悲し、愛し
7ページ/10ページ

「泥が付いているぞ、ここ」


くい、と親指で泥を拭い取ってくれる小平太先輩。
その指が熱くて、何故か胸がざわついた。


「あ、ありがとうございます」


にこ、と笑うと小平太先輩が腰を下ろした。
鼻先には小平太先輩の顔が。


ちゅ、と軽く口付けをされる。


今、何された?

小平太先輩の口が、ぼくの口に。

かっ、とあっという間に顔が赤く染まる。


す、と耳元に小平太先輩の口が移動する。


低い声で囁かれる。


「金吾。今夜、私の部屋に来い」


ぼくはそこで、再びあの出来事が現実だったことを理解する。


目の前が真っ暗になった。


期待と不安で。


「は、…はい」


ぼくは一体、どんな顔をしていたのだろう。

気付けば、走り出して、目から涙が出てた。


あの時とは違う涙。


ぼくはこの関係を望んでいたの?
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ