上×一は
□全ては、貴方のもの
1ページ/10ページ
私の心も、身体も、全て、それは、貴方のもの。
全ては、貴方のもの
―――金吾。今夜、私の部屋に来い
何度も頭の中を繰り返される、小平太先輩の言葉。
あの声が、あの顔が。
僕の全てを支配する。
たとえ、滝夜叉丸先輩の代わりでも。
ぼくは小平太先輩が好き。
「金吾ぉー、どうしたの?」
「え?」
喜三太とお風呂へ向かう途中。
色々考えていると、喜三太に話しかけられた。
「だって、さっきから上の空だよー?」
「あ、ごめん。ごめん」
「昨日、帰ってこないと思ったら、朝にはいるし…大丈夫?」
「大丈夫」
心配してくれる喜三太を安心させようと、笑顔を作る。
でも、それが無理してるように見えて、余計心配させてるみたいだった。
「ぼくは大丈夫だよ」
「そぅお?」
喜三太の気遣いが心に刺さる。
今日もいなくなることを知ったら、また心配させるかな。
「ぼくは、大丈夫だから」
念のため、もう一回言った。
そうやって、自分に言い聞かせた。
そうしないと、潰されてしまいそうだったから。