上×一は
□私、貴方、ふたり
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「あ、おーい。体育委員!」
用具委員長の食満先輩がぼくたちの方へ走って近づいてくる。
「なんだ、留」
「…今日はどこの山へ行くんだ?」
「あっちの山だが…」
そう言って、小平太先輩は裏々山の向こうを指差した。
そっちの方を見て、眉をひそめる食満先輩。
「なんか、あるのか」
「ああ。…山賊が最近、迂路ついてるみたいだから、気をつけろ」
「山賊?」
「あっちらへんは特にな。今日、実習に行った五年が遭遇したらしい」
「分かった…気を付ける」
真剣な目をする小平太先輩に見惚れる。
大事な話をしているのに、ぼくは一体何をやってるんだ。
ともかく、みんなに付いていかないと大変なことになりそうだ…。
「じゃーな。おれは伊作に用事があるから」
片手を上げて、また走って去って行った食満先輩。
それを見送り、ぼくたちは出発した。