上×一は

□愛おしくて、
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「普通に謝れば、良いんだ。山村だって、きっと分かってくれるさ」


「七松先輩…っ」


今にもその目からは涙が溢れてそうで。

そのまま、流してしまえば、いいのに…と思った。


「金吾、私の前では泣いてもいいんだぞ」


思ったよりも落ち着いた声に自分も驚く。
金吾の顔が上がり、私の顔を見る。

安心させるように、にこ、と笑った。

そして、流れる涙。


ぽろぽろ、と。


大粒の涙がその頬を濡らした。


「ふぇ…っ、」


その泣く姿が可愛くて、可愛くて。

向日葵のような笑顔とは違って、繊細な紫陽花のように見えた。


雨の雫に濡れる紫陽花。


優しく、抱き締めたい。


この愛しくて、愛しくて、可愛い存在を。


す、と手が伸びた。

金吾の頭をぽんぽん、と撫でる。


それに安心したのか。

更に涙が流れる。


今まで我慢して来た分まででてきたのか。


なんだか、嬉しくて。


「我慢しなくていい。私の前では泣いて良い」


優しく、金吾に声をかける。

こんな声出した事ない。


ただ、その愛しい存在に胸が温かくなった。


肩を震わせて、泣く金吾。



いつの間にか、金吾を自分の腕の中に引き寄せていた。

すっぽり、と収まる小さな体。



ああ、なんて。

この胸を焦がすような想い。



ぎゅう、と抱き締めた。
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