上×一は
□愛おしくて、
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「…」
空を見上げる。
青い空に白い雲が浮かぶ。
その目に映すものとは真逆の色が私の頭の中に思い浮かぶ。
「金吾」
黄色の花。
向日葵の花。
あの子の笑顔。
「先生」
あの子の声。
ば、と半ば反射的に声の聞こえて来た方に顔を向ける。
草木に包まれた裏山で、どうして金吾の声が。
先生…、ということは戸部先生と一緒なのか…。
私が壊れていく。
音も無く、盗み見る。
少し開けた、林に二人はいた。
稽古をした後のようだった。
「今度の休み、どこか行きませんか」
誘いの言葉。
花の咲いたような笑顔。声。
何もかもが、私ではない人に向けられたもの。
ぎり、と奥歯を噛み締める。
そうしないとどうなるか分からなかった。
頭が悲しみと悔しさで熱くなった。