上×一は

□愛しい貴方、艶やかな君
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いつまでも側に居たい。

でも、それは叶わない。




愛しい貴方、艶やかな君




「は、は、は」



日頃から走ってはいけない、と言われている廊下を駆ける。
六年にもなってそれはどうなんだ、と思われるかもしれないが、どうしようもなかった。


だって、あの人が来たんだ。

愛して止まない、あの人が。




体育委員会の活動中に、息を切らせて来た喜三太に告げられて、頭がぶっ飛んだ。
委員会をほっぽり出して、学園長室に向かう。


普段は冷静を保とうと頑張っているが、このときはどうしても冷静を欠いてしまう。


廊下の曲がり角を勢い良く曲がったら、ばふ、と人にぶつかってしまった。


気配も感じ取れなかったなんて…、どんだけ動揺してんだ…。


そうじゃなければ、その相手が気配を消すことに関して相当の腕を持っているか、だ。


「す、済みません…。急いでいたので…っ」

「六年にもなって、避けられないとは情けないぞ?」



その声は、愛して止まないあの人の声。

胸しか見えない視線を上げると、にっこりと笑ったあの人が。


驚いた顔のまま、呆けていると、ぎゅ、と抱きしめられた。


「ぅわ」


そのまま、人気のないところに運ばれる。



壁と腕に囲まれ、身動きが取れない。

目と目が合って、息が弾む。


どちらともなく口を合わせる。


「ふ…んっ」


長い長い口付け。

軽いものが段々と深くなっていく。

唾液がこぼれるのも気にも留めないまま、互いの唇を貪るかのように合わせていく。
角度を変えては、深く。


壁にあった腕が腰と後頭部に回され、なおも口付けを施す。


さらさら、と髪の毛が指から零れ落ちる。


息苦しくなって、ぎゅ、と背中に回した手を服ごと握った。


それを合図に、長かったそれは終わりを告げる。


荒い息を鎮めながら、目を見つめる。
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