企画

□そんなに夢中に、もっと夢中に
1ページ/8ページ

どうして、そんなに私を夢中にさせるの。

私がお前に夢中なように、お前も私夢中なの?

じゃあ、もっと夢中にさせてあげる。




そんなに夢中に、もっと夢中に




藤内は予習を欠かさない。


最近はそれが更に酷くなったと思う。

三年の実習訓練が増えたから、それに対しての予習の時間が必要になったのだ。


それにしても、休みがないと思う。

少しは体を休めないと、いつか倒れることになるかもしれない。


まあ、それは口実で。


つまりは私に構ってほしいのだ。





「さて、これで本日の委員会は終了とする」


作法委員長の立花仙蔵先輩が活動の終わり告げた。

今日の活動はいつもと変わらない、ものだ。

ありとあらゆる作法の一つを学び、実際にやってみる。それの繰返し。


そんなものでも、藤内は必死にメモを取っていた。


「藤内」

「なんですか?綾部先輩」


私が呼ぶと、笑顔で振り返ってくれる。それは良い。

でもこの後が問題。


「この後…」

「…あの、おれこの後予習しなきゃいけないんです…すみません」

「そう」


最後まで言わない内に、私の誘いを断る藤内。

確かに予習は大切だけど、そんな藤内の態度にむ、とする。


そんなことを思っている間にも、藤内は自室へ帰る準備をしていた。


「藤内…」

「ごめんなさい、綾部先輩」


そんな申し訳そうな顔をされたら、強くは言えなくなる。


これも惚れた弱みなのか。


私は、こくり、と頷き、黙って藤内を見ていた。


私は藤内と一緒にいたいだけなのに。

二人っきりで。

ゆっくりとくつろぎたい。


それだけなのに。


「それじゃあ、お先に失礼します」

「藤内、予習も良いが程々にな」

「はい!立花先輩ありがとうございます」


そう言って、藤内は作法室を出て行った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ