企画

□雨宿り、それから
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雨が止むまで、雨宿り

長く、貴方と一緒にいたい。

しとしと、と雨の降る音。

そして貴方の吐息。

それから




雨宿り、それから




「…」


おれの前を歩く中在家先輩。

おれと二人、私服姿で。


初めて、二人でおつかい。


「…っ」


楽しくて、嬉しくて。

たまたま、学園長先生に言われたときおれと中在家先輩しかいなくて。
そのまま、出かけるということになった。

おつかいの内容は隣町の本屋から本を調達していくという、とても簡単なことなのだが。

おれはそれだけでも、中在家先輩と二人っきりでいれることが嬉しくて。

気分が高揚していく。


「…ふふ」


嬉しすぎて、笑みがこぼれる。

ちら、と中在家先輩がおれの方を見る。


「あ、その…えっと」

「…」


なぜ、笑っているのか、と思っているのだろう。
しかし、これを言葉にするのはとても恥ずかしくて。

言い詰まっていると、中在家先輩の大きな手がおれの頭に触れた。
ぽんぽん、と叩く。


ふ、と優しく笑うその顔に。

おれは見惚れた。



「…私も…同じ」



中在家先輩も同じなのかな。

おれと同じ気持ちなのかな。


そうだったら、嬉しいな。


ふふ、と笑いながら、中在家先輩の後ろを付いていった。
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