企画

□雨宿り、それから
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「毎度ありー」


本を買っての帰り道。
二人で荷物を分けて、持つ。

中在家先輩の方が多くて。
こんな、些細なことでも歳の差が現れる。

当たり前のことなんだろうけど、おれは先輩と対等でありたい。


そんなことを考えていると、中在家先輩がいきなりおれと目を合わせる。


「…、」


何かを言おうとしている。
何だろう、と耳を近づけると、ぽつり、ぽつり、と水滴がおれの頬を濡らした。

それは雨で。

ぽつぽつ、と降り、そして次第に酷くなっていった。


「ほ、本が…っ」


おれは焦って、本を自分の腕の中に包み込む。
すると、中在家先輩の手がおれの腕を掴んだ。


「!?」

「…」


ぐい、と引っ張られる。
そのまま、走り出す中在家先輩。
おれは抵抗することもなく、素直についていった。

少し走ると、近くに小屋があった。

中に入るとそこには誰もおらず。

空き家かな…と思った。


「…、ここで雨宿り」

「そうですね」


とさ、と本を床に置き、手拭いを取り出した中在家先輩。
その手拭いはおれの頭にぱさり、とかけられて。


「え…?」

「風邪を引く…」


ふわり、とおれの頭を包む中在家先輩の手拭い。
先輩の懐にあったためか、温かいように思えた。

少し、体温が上がった気がした。


おれって…。

一人、恥ずかしくなる。

顔が熱い。


いや、何してんだ。

中在家先輩は拭けないじゃないか。

これくらいで風邪を引くようなことは六年だから、ないだろうけど…。


それでも、中在家先輩が濡れたままなのは、おれが嫌だ。
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