企画

□あなた、わたし
1ページ/5ページ

あなたぼく

きみと、わたし

ずっと一緒に。




あなた、わたし





燦々と降り注ぐ、太陽の光。

伊助の後姿を私はじっと見つめている。


「よし!終わったー!」


達成感に満ちた声と共に風がぶわ、と吹く。
その風になびく、洗濯物たち。

白い布たちは陽の光に当てられて、少し眩しい。


「お疲れ様、伊助」

「庄ちゃん、いつからいたの?」


にこにこ、と縁側に腰掛ける私に近づく伊助。
私は、右横に座るように促した。

石鹸の匂いが香る。


あれらの洗濯物は私たちのではない。

そう、あいつらのだ。


「伊助!また頼むな!」

「もう二度とするか!この馬鹿旦那!虎馬鹿!」


遠くの方で、手を振る団蔵と虎若に怒鳴る伊助。
毎回、毎回、このやり取りを見るが、一向に懲りない二人である。

伊助も伊助で、こうは言うものの、汚いものには目を離せない性分のため、やってしまうのだ。

私はそんな伊助も愛しい。

その様子が面白くて、ふふ、と笑った。


「なに、笑ってんのさ…庄左ヱ門」

「微笑ましいな、と思ってね」


正直に言う。
誤魔化したら、更に機嫌を悪くするから。
それに、正直に言った方が。


「微笑ましいって…」

「まるで、子供を相手している母を見るような夫の目線…かな」


伊助は頬を赤くして、照れるから。

これが止められない。


「庄ちゃんって、阿呆だよね…」

「そうかな?」


顔を赤くしたまま唇を尖らして言う、そんな伊助が可愛くて、私は一層深い笑みを伊助に向ける。
伊助はぎょ、と目を見開いて、そっぽに顔を向ける。

その反応がやばいってこと、分かってるのかな、君は。
分かってないんだろうな。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ