企画

□誘い酒
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誘い、誘われ

を飲み。

誘い、誘われ

腕の中。




誘い酒





六年生で集まってこそこそする日がたまにある。
誰かがどこからか酒を入手すると、ささやかな宴会が開かれるのだ。

大体は飲み干したら終わり、である。
六年みな、酒に若干の差はあるがそれなりに強い。

ゆえに、酔わないのだが。


今回は違った。


元忍術学園教師、大木雅之助から食満留三郎が貰って来た、このお酒は最も強いお酒である。

一番ではないにしろ、なかなか強い小平太が酔ってしまったのだった。


「小平太が酔うとはな」


冷静に対応できるのは、忍術学園一冷静な男と。


「…初めてだ」


学園一無口な男だけである。


「いやいや、そんな暢気なこと言ってるバヤイじゃないよ!」


伊作が恐々、としながら、二人に訴える。
しかし、そう言う伊作もどこか不自然だ。

いつにも増して、涙脆くなっているのだ。


こうしている今もめそめそ、と涙があふれ出ている。


「…こうなったのも…、ぼくの所為なんだ…」


学園一不運な男。
普段は気にしてないように振舞っているが、やはり気にしていたのだろうか。

部屋の端でずーん、と落ち込んでいる。

それを隣で留三郎が励ましている。

さすが、六年も伊作と同室なだけはある。


「…私、酔ってないぞ?…なぁ、長次ーぃ」


頬をほんのり、と桃色に染め、まるで猫のように長次に懐く。
長次に甘えているのだろうか。

普段の小平太からは想像出来ないほどの甘えぶりである。

仙蔵が面白いものを見るように、腹を抱えて笑いを堪えている。

文次郎は目を見開いて驚いている。


あの暴君が酔うとこうなるとは。


とでも思っているのだろうか。


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