‡オリジナル小説‡
□第一話 始まりは地獄。終わりまで地獄。
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「角田咲さんですか??」
駅の中にあるコンビニの前であたしは黒髪の長髪、黒いYシャツにスーツを来た長身の若い男性に声をかけられた。
みるからにホストかキャバクラのボーイ。
「…はい……。」
あたしは一瞬戸惑って歯切れの悪い返事をした。
というのも、
こんな、22〜3の若いお兄さんが来るとは予想外だったから。
面接の予約をしたのは数日前、駅で配っていたあやしいティッシュを見てお金に困っていたあたしは、
メイドキャバクラ!
時給3000〜!
体験入店10000!
を見てとびついた。
3月に家庭の事情で無理矢理追い出されたあたしは一人暮らししたはいいものの…
なんだか一気にバイトもやる気がなくなって辞めてしまい、コーンフレークを食べて空腹を満たすような毎日だったから…
とりあえずお金が欲しかった、というか必要だった。
まぁ実際、興味があったというのも本音だったけど…
「じゃあ、喫茶店で面接するので、行きましょうか?」
「あ…はい!」
外見とは違い礼儀正しい様にあたしは好感をもった。
でも…
「………………………………………………。」
「………………………………………。」
初対面だからなのかやはり、会話はない。
というか…
「この人…
めっちゃ疲れてる!!(笑)」
目は死んだ魚みたいだしそもそも歩き方がおかしい…
足をアスファルトに擦るようにして歩く姿はまるで年老いたゴリラのようで思わず吹き出した。
「ぶっ………」
「えっ…!?なっ…なんですかっ!???!
ボーイさんらしき人は長い前髪を人差し指と中指をアイロンを使うように直しながら少し笑った。
あたしは歩き方がゴリラみたいだったのでと思いつつ初対面の人には口がさけても言えないので。
平静を装い
だいぶお疲れみたいで…
と返した。
ボーイさんは半笑いで駅ビルのドアを開けて入っていく、
あたしも小走りでついていった。
その駅ビルは待ち合わせをしたコンビニから3分とかからない所で、ありがちなデパートだった。
二階の婦人服売り場をエスカレーターまでつっきり、三階の紳士服売り場をこえた先が喫茶店だった。
ボーイさんは慣れた様子で喫茶店の店員さんに
「2人です。」
と告げ、窓側の喫煙席に通された、
オレンジ色を基調にした店内はキャバクラの面接には似合わない爽やかさをかもし出していた。
「何飲みます??」
あたしが腰かけるとテーブルに置いてあったメニューをあたし向きに広げてくれる。
「あ…
じゃあ…ミルクティーで。」
「ホット?」
「はい、ホットで。」
飲み物が決まるとボーイさんは「すみませぇーん」と店員さんを呼びあたしが選んだミルクティーとアイスコーヒーを告げ「お願いします」と言った。
最近の若者にしては中々出来たヤツだと思った。
相変わらず眠そうだけど…
ボーイさんは飲み物がくる間、名前を名乗るのを忘れてたと言い加治です。と言った。
私はてっきり飲み物が来たら色々聞かれるんだろうなと思っていたが、
加治さんはいきなり…
「彼女ほしいんだよねー」
などと言い出し、
働く上でまったく関係のない話ばかりふってきた。
どうしたら出会いあるかな??
とか
潔癖症だから友達くるとイライラしちゃう…
とか
しまいには
俺樹海行ったほうがいいかな!?
とか…
この人大丈夫かな…
と心配になった、
まだ私も30分くらいなら、気を使って和むようにしてくれてるのかな…とか思えるかもしれないが…
あきらかに喫茶店についてから、かれこれもう1時間半以上は経っていた。