みじかいの

□犬京の
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■ 白昼夢 ■


夢を見る。

意味がわからない、悪夢であることだけは間違いない、やけに鮮明な夢。

夜の風が始まりだ。

扉も窓も閉め切っていたはずなのに、風が、首筋をひやりと舐める。

起き上がると風が吹いている。

開かれた窓、忍び込む夜風が、幽霊のようにカーテンを揺らす。

その向こう、暗闇。

真白の月の完全な円を冠のように頭上へ抱いた、獣が、隣家の屋根から、こちらを見つめている。

物言わぬ獣は、音も立てず跳躍し、窓辺から、滑り込む。

あり得ない光景。
そう否定する間に、獣が襲いかかる。

ぐらり、前肢が身体を倒し、獣がのしかかる。

倒れる、空転する視界、むっと鼻をつく泥と血の混じる体臭、べとつく涎が、顔を濡らす。

暗闇。

目が光る、ざらざらした舌が喉笛を舐める。
噛み殺されるかと目を閉じようとし、ああこれは夢なのだと、瞼を大きく見開く。

獣は皮でもなく肉でもなく夜着を食い千切り、ようやく違和感に、暴れる。

風が冷たい、皮膚が、ざわざわと砂のように強張る。
もがく手が掴む獣の長い毛皮、かわりに、爪が肩に胸に首に、食い込む。

それからは狂気。
四つ足の獣に為す術もなくなぶられ犯される、夢。

月から吹いてくる冷たい風に、女のような鳴き声でただ赦しを請う、心を刻まれる悪夢が、満月の夜ごと訪れ、絶望で身体を満たす。

夜明け、馴れ親しんだ屈辱が意識を遠のかせるとき、ほのかに漂うのは───

「……煙草……?」

獣にはおよそ不釣り合いな──紫煙の香り。











「───オレ…あいつ、嫌い」
「先生相手に、あいつ呼ばわりは失礼だろう」
「うるせェな!」
「おい……」
「気に食わねえモンは気に食わねえんだよ! あの目付きとか喋り方とか───」



煙草の匂いが




‥ end ‥
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