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□『過ぎた日々と今』
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『過ぎた日々と今』
大雨が止まないなかで、俺はアイツと戦った。
その勝負に勝ったのは俺で、負けたアイツは、
死 ん だ
俺はこれですべてが終わったと思った。
憎悪や怒り、恨みからやっと解き放なたれる。
そう思った。
たが、それは違った。
俺はアイツを倒した後、アイツの師とか何とか言うやつにアイツの真実を教えられた。
始めは信じられなかった。
アイツが、感情の何もないような目で一族を殺したアイツが、
『俺を守る為に一族を殺した』
という事に。
全てが俺の為だったというのに。
悔しかった。
アイツを助けてやれなかった事が。
心の中で泣いていたアイツを救ってやれなかったことが。
もし、アイツが里を抜ける前に、アイツの微かな悲しみに気付いていたならば、今ある未来は変わっていたかもしれない。
だが、過ぎた日々は戻らない。
伝えたい事も伝える事ができない。
だが、
俺は今生きている。
今をいきているんだ。
伝える事ができなかった事を後悔するよりも、今できる事を精一杯する事を考えようと思うようになった。
『兄さん、あんたの仇をとってくる』
それが今俺に精一杯できる事。
『過ぎた日々と今』
END.