Tennis

□ホッカイロ
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ホッカイロ

(さむい・・・)

授業中。季節が季節なので、学校もストーブを使いだした。
しかし、1時間目の今はまだ熱が全体に行き渡らず、最後尾に席を持つオレは寒さに身を縮こまらせていた。
教室を見渡すと、やっぱり前の方の列は眠そうに先生の話を聞いていて、中から後ろはほぼ皆寒そうに肩を縮こまらせていた。
見回していてふと目があった。隣の席の丸井だ。(ここだけの話、オレは丸井の事が好きだったりする)

(何、どーしたん?)
(いや・・・さむいと思って)
(あー、だよなー。1時間目だからまだ温かくなんねえもんなー)
(そうそう)

小声で軽く喋る。するとおもむろに丸井はポケットに突っ込んでいた手を抜き、オレに差し出した。
丸井の掌を見ると、そこにはくすんだオレンジ色した四角いかたまりがあった。
意図を読めず丸井に視線を送ると膨らませていたガムを割り、言った。

(ホッカイロ。貸したげる)
(え、いいの?)
(おう。使え使え)
(・・・サンキュ)

丸井の手からホッカイロを受け取る。・・・温かい。
じんわりと冷えていた手に熱が広がり、とても心地良く感じた。

(どお?)
(うん。あったかい)
(よかったなー)
(ありがとう)
(あ、やるよそれ)
(え、いいの?)
(おう。俺、もいっこあるかんな)

ほい、とどこからともなくもう一つホッカイロを取り出してみせた丸井は(多分袖から出したんだと思う)
得意気に天才的だろい、とか言ってた。その様子がなんとなく可愛くて、うん、と笑いながら頷いた。

そしてお互いなんとなく授業に戻る。先生のつまらない話が再び耳に戻って来た。
じんじんと掌が熱を持ってきた。



ホッカイロの温かさよりも、ホッカイロに残る丸井のぬくもりが気になってしょうがなかった。








end.


季節ネタ。きっと好きな人から貰ったカイロって、特別だと思う。ドキドキしちゃうよね。

(051030)
 

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