駄文
□新八迷子になる
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☆新八迷子になる☆(銀仔新)
「・・・どうしよう・・・みちがわかんなくなっちゃった・・・」
いつも遊んでいる公園で、父親の迎えをまっていた新八は、見たこともない高い建物の並ぶ道を一人てくてくと、あてもなく歩いていた。
誰かに助けを求めたくて周りを見回すが、そこには人っこ一人いなかった。どうやらオフィス街に入り込んでしまったらしい。
もうすでに日が沈みかけてるこの時刻に娯楽施設のないこの地域に人はよりつかないだろう。
大きく、冷たい石の建物が並ぶこの町の中で新八は一人取り残されてしまったのである。
「んっ・・・っく・・・」
まるで、別の世界に迷いこんでしまったような錯覚を覚えた新八は、とうとうその場に座りこんでしまった。
大きく綺麗な瞳からはポロポロと涙がこぼれる。しかし、声はあげなかった。幼いながらに武士としての誇りをもっていたのだろう。
「どうしたぁ?ボウズ。迷子か?って聞くまでもねぇよな」
背後で声がしたとたん、新八はその人物に抱きつく。
「うわぁぁぁぁぁんっ!!」
武士の誇りは持っていても、やはり、幼い子供。自分以外の人間の存在にほっとして枷が外れたらしい。力いっぱい抱きつく子供の髪をくしゃりとかきまぜた。
「おいおい・・・せめて一瞬でもいいから、どんなやつか確認しろって・苦笑(オレじゃなかったら間違いなく誘拐されるぞコイツ)」
迷子にかける言葉としては、あまり優しいとはいえないが、自分の頭をなでる手が温かかったから、何の恐怖もなくその人物の顔を見上げた。
夕日に照らされて光輝く銀色の髪・・・・
「あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
その男の顔を見たとたん、新八の涙はひっこみ、しきりに銀色の髪を指差した。
「なんだ?今度はなんだ?おい、コラ、人に指さしちゃいけませんって習わなかったのか?」
そういった彼の言葉は新八の耳には入っておらず、一生懸命手を伸ばして、ぴょんぴょんとはねている。
「だから何だっつぅ〜の。さっきまで豪快に泣いてた癖に元気だなオイ」
「それ!」
「それ・・って、これか?」
男は自分の髪を軽くひっぱると、新八はコクンとうなづいた。
まあ、銀色の髪なんてめったにないからな・・・と触らせやるつもりで、小さな身体を抱き上げる。
「これ、くださいっ!」
「あ?・・いででででえっおまっやめろって、馬鹿。銀さんハゲちゃうから。若ハゲは勘弁だからっ」
いきなり髪をむしろうとする新八の手をやんわりとはずす。
「だめ・・ですか?」
しょんぼりする新八に、男の胸がズキンと痛む。
「(そんな顔するなって)なんで、こんなもんほしいんだよ」
「あさってね、あねうえの、おたんじょうびなの」
嬉しそうに笑って答える新八に男は複雑な顔をする。
「それで、髪って怖くね?ヤバくね?おまえの姉ちゃんが髪の毛欲しいっつったのか?」
いやな姉ちゃんだなぁ、おい。と男は思ったが、新八が顔を横にふったので、ほっと息をついた。
「ぼく、なにあげたらいいかわからなかったの。だから、あねうえに「なにがほしいですか?」ってきいたら・・・」
そこで、新八の口は閉じてしまった。
「あ?どうした?人に言えないようなもんか?」
「えっと、あのね。えっと・・・」
どうやら、その単語を忘れてしまったらしい。それでも一生懸命思い出そうとしいるので、男はじっとそのまま待っていた。