高新部屋

□捜索者
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志村新八。ただ今自宅にて、封書とにらめっこをしております。


差出人の名前もない封書に『よろず屋のメガネ』とだけかかれてある胡散臭いことこの上ない代物。封書を触るかぎりカミソリの類は入ってなさそうなので、さっさとあけてもよさそうなのだが、それができない理由があった。


小さいころ、差出人の名前がなかった手紙が新八に届いた。でも、初めて自分宛に来た手紙だったので、喜び勇んであけてみたら『不幸の手紙』だったのである。

よくある話だが、人を疑うことを知らない新八はその手紙を真に受け、やく1週間部屋に閉じこもってしまった。その事がトラウマになっていて、封がきれないのだ。


(どうしよう・・・また、不幸の手紙だったら・・・いや、さすがに信じてないけどさ。、もし不幸の手紙だったとしたら受け取った時点で不幸決定だもんな。あれ?やっぱ気にしてんじゃん僕・汗)


でも、このままずっと睨めっこしているわけにもいかないと、新八は大きく深呼吸すると、『よしっ』と掛け声をかけて封を切った。


中には、2枚の紙切れ。


「・・・・・」

黙って2枚の紙を見比べて、はぁと溜息をついた。



(何の謎かけですか・・・・高杉さん・・・・汗)



一枚目は地図、2枚目には『8月3日。午前9時にメシもってこい』とだけ書いてあるメモ。こんな手紙ををよこすのは一人しかいない。

そして、新八の溜息の原因は地図にあった。

江戸全体の内部が細かく把握できる地図に、どんっと大きく○で囲っているだけなのである。かろうじてわかるのは歌舞伎町だということ。他人に見られるのを危惧してのことだとしても、受取人がわからないのでは意味がない。


「あ・・・もしかして・・・」


そうつぶやくと、2枚の紙を光に透かしてみた。どこかに隠し文字があるかもしれないと思ったのだ。だが、なんら変化はない。その後も、新八は、あぶったり、鉛筆でこすってみたり、水につけたりと、色々試したがやはり何の変化もなかった。

案の定、2枚の紙は見る影もなくなっていて元の文字も読めなくなっていた。

が、内容はあれだけだったので読めなくても支障はない。そして隠し文字がないとわかった以上それはゴミ以外の何者でもなかった。だが、新八は2枚の紙を乾かすように洗濯ばさみでつるしたのである。


畳の上に寝転がって、吊るされた紙をぼうっと眺める。

「何で乾かしてんだろ・・どう考えてもゴミじゃん・・・・いや、これ捨てたら本当の不幸の手紙になりそうだし・・・うん、そうだ。そういうことだよ新八くん」

ボロボロになっても捨てられない理由を、そう自己解釈した。一体この少年は高杉を何だと思っているのか・・・・


「はぁ〜・・・高杉さんって結構大雑把な人だったんだ・・・でも、ほんと、どうしよう・・・とりあえず8月3日までにある程度の目星はつけとかないとなぁ・・・」

そういいながら新八のまぶたはゆっくりと落ちていった。よほど疲れていたのだろう。



(あ・・?8月3日?)



「って、明日じゃんっ!!」


がばっと起き上がった新八は、軽くパニック状態に陥った。
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