高新部屋
□捜索者
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あの後、沖田さんは迎え(・・っていうのか、あれは・・)に来た土方さんにひきずられるようにして万事屋を去っていった。
「そろそろ僕も帰りますね」
「お〜おつかれさん」
ソファーに寝転がったままヒラヒラと手を振るダメ上司に、一応お辞儀をして玄関をでる。
カンカンカン・・・・と階段を下りながら、ふと見あげた空がすでに明るさを失っていることを知り、神楽ちゃんを見つけてから帰るかぁ〜と思っていたら、
階段の一番したの段に神楽ちゃんが座っていた。
「(なんだ、帰ってきてたのか)どうしたの、神楽ちゃん?何みてんの?」
「何かオモロイもん」
「は?」
じっと神楽ちゃんが見つめている視線の先には、一人の飛脚。あれ?見たこと無い顔だなぁ。新人さんかな。
「あの人がどうしたの?」
「人生の愛と苦しみ、満面の笑顔そして勘違い、時には怒り狂い、泣き喚き、悲壮観漂う奴のオーラにあたいは釘ヅケさ」
「いや、全然わかんないんですけど・・・汗」
そう言った僕を横目でちらりと見た神楽ちゃんは、ふっとさめた笑いの後に、ダメだこりゃと首を振る。
いや、そんな説明で理解しろって顔されても無理だからっ!
と、言いたかったけど、僕の周りの連中はどいつもこいつも、一度ツッコミを入れると次から次へとボケ倒してくれるので、はっきり言ってきりが無いのだ。
今日はもうドSコンビのせいでクタクタだったので、同じ轍は踏むまいとぐっとこらえた。再び飛脚に視線を移すと、なにやら封書を手にして、あたりをキョロキョロしている。
ああ、なるほど。そういうことか。
「どなたのお宅をお探しですか?」
僕がそう声をかけると、その飛脚の人はほっとした顔をしたので、この問いかけは間違っていなかったらしい。
つまり、この人は郵便物の配達場所がわからなくて困っていたということ。おそらく百面相していたこの人を神楽ちゃんが面白がってみていたのだろう。
・・・って、それひどくね?
そう思って神楽ちゃんのほうを見れば、大きなあくびをして万事屋へと戻っていった。僕が彼に声をかけたせいで百面相が見られなくなったからか、たんに飽きたからか・・・
まあ、どっちでもいいか。とにかく、おてんば娘がまたどこかへ遊びに行くのではなく、家に戻ったのが確認できたのでよしとしよう。じゃあ、僕もかえ・・
「あの〜・・・」
あ、しまった。この人のことすっかり忘れてたよ・・なんかもう半泣き状態だ。あれ?僕いじめっ子?
「あ、すいません。で、どこに配達したいんですか?」
「それが・・・これなんですけど」
その人が差し出したのは、このあたりの簡易地図とずっと手にしていた白い封書。地図には確かにこのあたりらしき場所に○がついている。そして封書には・・・
『よろず屋のメガネ』
・・・・・・・・・
おい・・・・・・・
これって・・・・・
「・・それ、たぶん僕のことです」
「ほんとですか!?よかったぁ〜。上司に1通残らず配達してこいって言われてたもので、このまま見つからなかったらどうしようかと思ってたんです」
『じゃあ、これ・・・』と満面の笑顔で差し出してくるので、僕も釣られて笑顔で封書を受け取った。
「それにしても、あの看板見えなかったんですか?」
「え?ああ・・・いえ、見ましたよ?」
は?
「じゃあ、何でそこに届けなかったんですか?メガネだけじゃわからないかもしれないけど、ここにちゃんと『よろず屋の』って書いてあるでしょ?」
「あ〜あれって『よろず』って読むのかぁ〜」
ガクッ・・・漢字が読めなかったのか、この人・・・・
「その・・・余計なお世話かもしれませんが、この仕事を続けるなら、漢字の読み方をもうちょっと勉強したほうがいいですよ?」
「・・・・・」
「あの〜聞いてます?」
「あっ、はい!そうですよねっ!ご指摘ありがとうございます!それじゃぁ、また!」
「(また?)がんばってくださいね」
「はいっ!」
(いい子だなぁ〜。よし、今度からあの辺の担当にしてもらおう!)
なかがき。
なるほど、こうやって新八のファンは増えていくのか・・・(しみじみ)
・・じゃなくって!オリキャラ出してすみません!大丈夫です、この人はこれっきりですから!今後の展開に絡んできたりしません。
余談ですが、彼の要望は却下されます・笑。