MAIN 目次

□夢にアナタ。
1ページ/1ページ

(故)サソデイ(それは何よりも願ったもの!)


『夢にアナタ。』



藍色とも群青色ともつかない、静かな世界が隅々に広がって、まんまるした月がやんわりと光を降らせる夜に夢を見た。

まっさらな青空へ運ばれてきた平穏と平和の中で、髪や肌の色、形や匂いに囚われることの無い人々の顔は、喜びと笑顔に溢れて声を上げ、幸せを歌う。花咲く草原に寝転がり、空にたゆたう雲を眺める日がな一日、また一日。おぞましい争いの最中、心にふと願ったいつかのそんな景色。そこには季節が巡ってもあの頃のまま、相も変わらない旦那がいるんだ。
名前を呼ぶ優しい声と、髪を、輪郭をゆったりと撫でるこの冷えた指を確かめるように目を瞑って、愛おしい、そんなキスをひとつ、オイラはあげて。

藍色とも群青色ともつかない、静かな世界が隅々に広がって、まんまるした月がやんわりと光を降らせる夜に夢を見た。
もうあの穏やかな声も、冷たくも心地良いあの指さえも、どんなに願っても二度と届くことは無いのに。

夢を見た。

哀しくも、愛おしい夢を見た。







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ