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□ジギタリス
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※性描写有り。サクカカ(隠しきれない恋!)


満たされないそれは、一度自覚をしてしまうと止めどなく溢れ出して、気が付く頃には、私自身に溺れさせられる私がいるのだ。

唸るような好きだという感情に任せて、ただただ貪る程にキスをして、爪痕を残す位に肌へ触れてみたいのだけれど、そんな私の腹心を知りもしない。目の前の男は涼しい顔をしてソファで居眠りをしていた。
出会ってから何一つ変わることなく流れた月日は7年にもなり、私も先生も少し歳を重ねた。

「―サクラ、・・・何してるの」
「あら先生。おはようございます」

腹の上で白々しく挨拶をする教え子に、先生は怒ること無くため息を一つ吐く。ほら、ね。
今が実戦ならば窮地に立たされたそんな状態であっても、嫌味なもので、先生からは焦りの片鱗さえ窺えない。信頼の証と言えば大層幸栄な事だが、男女の壁さえもが無いと言ってしまえばそれまでだ。

「降りなさいよ。気安く人の上に座るんじゃないの。況してや男の上に」

そんな暗に含ませた事を言っても、どうせ何とも思っていない癖に、と心の内で呟く。
「もう子供じゃないんだからさ」と、そう言いながら、少し腿上に捲れた私のワンピースの裾を直す。先生の長い指が脚を掠めた。

「そうよ。私ね、もうずっと前から子供じゃないのよ」
「え?」
「気安く男の人の上にこうする事が何故いけないかなんて、知ってるわ」
「何言って―、」
「ねえ、センセ。先生が知らない事を教えてあげましょうか」

少し怪訝な表情をした先生の目を、真っ直ぐに見下ろす。
太腿の裾で止まっている指を無造作に掴んで、自分の胸へ宛てがうと、指はびくりと跳ねた。そのままゆっくりと乳房を象る様に動かす。

「・・・!ちょっと」
「初めては2年前。任務で他国に行った時に知り合った子とシたの」

先生の手に指を絡める。甘噛みをすると、自分の手より遥に大きいその手は骨張り、舌に触れる皮膚は厚く、見掛け以上の男性さを感じさせた。

「痛くも、大して良くも無かったけど、嫌いじゃ無かった」
「止めなさいよ、サクラ」
「でもね先生。それから何人かとシたけど、男の子の顔なんか一人も覚えてないんです」

ボタンを外して、前開きにした胸元に先生の手を無理矢理誘導する。ブラジャーを捲し上げた素肌に、唾液で汚れた先生の指が触れると、熱く、少し震えているのが分かった。固くなった乳首に爪先が掠り、ふうっと思わず息が漏れる。

「サクラ、止めろ」
「さて、それは何故でしょうか」

覆い被さる様に唇を落とし、強引に割り込ませた舌で口内を荒らす。
先生は顔を背けよう身動ぐが、唾液の水音が大きくなるに連れ、次第に上ずった呼吸が漏れ出していく。
私の身体を跳ね除ける事など至極簡単なことなのに、私の肩口を掴む力は笑える程だ。その上、意に反して熱くなり始めた下半身に焦りと困惑を浮かべた先生の表情を見て、私は酷く興奮をした。

「それはね、」

「―っ!止め・・・っ」

下半身へと手を滑らせて、ズボンの上から膨らみにと触れる。ぐりぐりとまさぐると先生は苦しそうに顔を歪め、くぐもった声で私の名前を呼んだ。

「ーそうよ。そうやって名前を呼んで欲しかったの、ずっと」
「ー・・・名前なんて、何度も」
「違うの」

自分の身体を先生へと預けると、乱れた呼吸に身体は火照り汗ばんでいる。熱さを確める様に至る所へキスを落とす。

「教え子や部下じゃなくて、貴方に女として見て欲しかった、ずっと」

肩口を掴んでいた先生の手が無意識に太腿を撫で始める頃には、私も匂い立つ程にすっかり濡れていた。
先生の手に秘部を押し当てると、ほんの少し戸惑った指がゆっくりとなぞり上げた。淫らな刺激に腰を捩ると、それに呼応するかの様に陰核を引っ掻かれて思わず身体を反らせて仰ぐ。

下着をずらして、先生の硬く張り詰めた物の先を這わせる。互いの淫水で滑るそれを、ゆっくりと一息に飲み込んだ。


「先生、好きよ。愛してる」


満々とした入り口を逃さない様に腰で刺激をする。
頑なに目を瞑る先生からは、まるで余裕は感じられなくなっていた。汗が伝う頬に手を添える。

「ずっと、先生の顔を思い浮かべていたわ」
「・・・!」
「他の男の子とセックスしても、ずっと先生の事を考えてた」

そう告げると、先生の顔はどこか苦しそうに歪んだ。
次第に、自分の動きに、下から突き上げる様な震動が加わり始め、ぐちゃぐちゃと交ざり合う体液の音がより一層と高まる。


「ね、先生は、私の事を考えてシたことある?」


そう訊ねると同時に、先生の身体が大きく脈を打つ。中を深く突き上げられながら、乳房を掴まれて喘ぎをあげた。

「ーずっと、触れたいと思ってた」

吐き出すように先生は言った。

「え?」
「そんな事は許されないと分かっているのに、頭の中で何度もサクラを抱いた。何度も」
「・・・本当?」
「知ってたよ、全部。若い奴らに嫉妬も沢山した」
「じゃあ私のことー、」
「だけど、相応しいのは俺じゃないと思ってる。でも、」

「ごめんな。もう今は、止められそうに無い」

徐々に激しさを増す、打ち付けられる様な快感に、自分のものとは思えない程の甘くだらしない声が大きくなる。
耳にはいやらしい音がこだまし、視界は無数の灯りがちらつき出した。意識が飛ぶ。そう思った瞬間、先生の指が、紅く脹れた私の真ん中を摘まみ上げて、小さな悲鳴めいた声で絶頂を迎えた。



乱れたワンピースを先生は無言で、けれども丁寧に整えてくれた。

「・・・」

私はといえば、浮かされていた熱から解放され、自分のしてしまった事を抱えきれずに放心していた。満たされない気持ちに溺れ、犯してしまった後悔を何処へぶつければ良いのか分から無い。

「あの、先生、・・・こんな事してごめんなさい」

顔を合わせない様に急いで立ち上がる。
目の前が揺れるのは、まだ余韻の残る腰のせいか、それとも涙のせいか。ともあれ、踏み込んでしまった距離を後戻りすることも出来ないのだ。

「サクラ、ごめんな。でもありがとう」

先生の小さく、しっかりとした声を聞き終えてから、私は火影室のドアを後にした。



『ジギタリス』










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