微睡みの雫達

□双ツト無シ
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結の反応を見ていれば、少なくとも、結がどう思っているかは、すぐに推察出来る。

「ええ!?、み、宮野は…そんなんじゃなくて、、」

「ふーん、俺はどっちの少年かは、言ってないんだが…」

紅くなった結に、ニッと笑ってそんな事を言うものだから、更に真っ赤になる結。その反応と言葉だけで察したらしく、「片想いか、花が咲くといいな」、男は、微笑みながらそう言った。藤乃からも自然に笑みがこぼれ、結は真っ赤になりながら、呻き声の他に、煙を発ち昇らせていたらしい。

そして、自然と自己紹介が始まったのは、シオドラッドと、エプロンを外した夜鷹が席に着いた頃、藍色の髪の男が、カオル=レイバード、と最初に名乗った事で、幾分かそんな空気になった事もあるだろう。

「ユーグフェリアにミヤノに、トーマに、ミコ、、だな」

「みこ?」

それぞれの名前を確かめながら、カオルが口にした「ミコ」という単語は疑問の1つだが、カオル曰く、「ミコジマ」という言葉は、発音しにくいものらしく、略す事にしたらしい。
‐他にも、シオドラッドが「よーくん」と呼んでいた事から、宮野夜鷹の名を、「ヨークン=ミヤノ」という中華混じりの名前だと勘違いしていたのも、珍事と言えば珍事だろうか?‐


それはともかく、冷めない内に。「いただきます」、が、まるで号令のように夜鷹から聞こえると、各々が続く構図は、まるで給食のようだ。
そして、カツをあっさり半分にすると、ご飯とカレーを加えていち早くカオルが口に運ぶ。そして各々、遅めの昼食が始まる―――ハズだった。


「…むっ!?」
「これは…!?」

カオルとシオドラッドの微妙に重ならない声を反映するように、空間がグニャリと揺れた。色は変わり、まるでSFモノで見るワープ空間のように暗く回る景色――夜鷹達も気付いたが、瞬間的にそんな光景に巻き込まれれば、言葉を失うのは必然だ。
暗く濃い紫が一面にゆっくりと流れ続けているような空間。という割には、自分達の手足も確認出来るし、その場にいる皆が皆、全員を苦もなく確認出来るから、「暗く」とも言えない奇妙な空間<セカイ>が広がっていた。



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