微睡みの雫達

□双ツト無シ
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星明かりのようにキラキラと視界いっぱいで輝いているもののお陰とは思えないし、夜鷹達の知らない明かりがどこかで灯っているのだろうか?

「…ここは、」
「なんなんだよ…」
「ちょっと面倒そうかな…」

「わぁ…キレイ」

若干1名、結の反応がどこか違う気もするが、皆一様にこの空間へそれなりの思いを――いや、1名足りていない。それに気付いたのか、夜鷹と藤乃が、僅かな疑いの眼をカオルへと向けるが、カオルはただ立ち尽くしているようだ。シオドラッドが、「彼じゃないよ」、と言った事で収まったのだが、急に巻き込まれたこの空間に呆然としているのだろうか?


「…うまい」

こぼれた言葉が、疑問を一面に広げたのは当然だが、カオルがそれを受け付けてはいないのは明らかだ。

「、なんという美味さだ。ポークフライとカレー、、かくも合うものか!
…?、……どこだ、ここ?」


「今、気付いたのか…!?」
「ある意味、大物だね」

一同の呆れ顔も当然の反応だ。カオルが、異変に気付いたのは、2口目を運ぼうとした時に、スプーンとカレーが無い、という理由なのだから。


「…、擬似的に創られた亜空間、って所か、面倒そうだな、こいつは」

辺りを見回しながら、呟いたカオルの言い草はどこかシオドラッドに近い。カツカレーの美味さに驚きながら、この空間には全く動じない、カオルが人とはズレている事は明らかだが、何か知っていそうな口ぶり故に、夜鷹と藤乃の疑問符がカオルに向いた事もまた当然と言えるかもしれない。


「…亜空間ってのは、言ってみれば空間転移の際に通る、道みたいなもんだ。空間転移自体は、移動元の座標と移動先の座標における存在確率の変動によって移動する、、つまり、座標が存在しなければ、そこに移動する事は出来ない、こいつがな。

亜空間ってのは、座標の存在率が定まらず揺らぎ続けているから、そこそのものに転移は出来ない。だが、何らかのチカラを使って、亜空間に近い異空間を創る事は人のチカラでも充分に可能だ。恐らく、そういう事だろ?、こいつは」

疑問符を察したカオルの考察、藤乃は、それとなしに理解しているように見えるが、夜鷹の疑問符は余計に拡大したようだ。
もっとも、カオルが、「お前絡みだろ?」、と言わんばかりに、確かめるような視線をシオドラッドへ向けていると、藤乃と夜鷹も、自然とそちらへ流れた。もっとも、「ホントにすごいキレイ」、と1名が「違う方向」を向いているのも気掛かりだが。



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