微睡みの雫達

□双ツト無シ
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「あなたに心当たりがないなら、僕って事になるのかな…?」

やや疑問符を含んだ言葉には、相手の姿も声も聞こえない点にあるのだろう。だが、それ以上にシオドラッドにあったのは――
「ごめんね。また皆を巻き込んじゃったみたいで…」

自責の念だった。笑顔にいつものひょうひょうとしたそれが伺えない。先日、学校に閉じ込められたばかりで、今回の要因が、カオルにあろうと、シオドラッドにあろうと、カオルへの注意から、全員が集まるように仕向けたのは自分だ、という想いが、強く強く、あったに違いない。


「星が落ちてきそうだよね…、こういうのって、流星みたいな狼とかが、ビューンって、流れてきそうだよね!」

多分、聞いていたのだろう。更に明るい調子で、皆に笑顔を見せる結のそれには曇りが見えない。本音半分、励まし半分、といった所か。

結の事を知らないカオルは、やや面食らった面持ちだが、藤乃が、「ファンタジー好き」、と、説明を入れる事で、やや納得したようだ。

「ハンドル握ったら性格変わる、みたいなアレか。
、ま、悲観的になるよりはよっぽどいい、こいつがな」

そう言って、またシオドラッドへ、ニッと笑ってみせた。
「反省なら後で出来る、今やるべきは―」、まるで、そう言われているようで、シオドラッド自身、余裕を無くしていた自分に気付いたのだろう。そして、気持ちを切り替えたのだろう。カオルに釣られるように、シオドラッドも笑顔を見せた。いつもの、ひょうひょうとした笑顔を。

「そういえば!、さっき、なんか色々と説明してましたよね?、ひょっとして、レイバードさんも、魔法使いとか…きゃー、すごいすごい!」

タバコをくわえようとするカオルへの疑問のような感嘆のような、きっと言っている本人も分かっていないに違いない。

「悪いが、魔法使いじゃない。強いて言うなら、物だな。ある事を成す為に創造(つく)られた道具、、駒だ」

紫煙を交えた言葉、淡々としたカオルの表情はやや微笑んでおり、ただ普通に答えただけなのだろうが、一同に沈黙させるに充分だったようだ。
もっとも、それに気付いたカオルが、やれやれと言った表情で、今はここから出て、カレーを食す事のほうが自分には重要だ、と言った事に、やたらと説得力が有ったために、皆そちらに納得してしまったようだ。



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