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□断章・2,5
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―断章・2,5 ‐禁句<タブー>‐―
それはアユムが、ユーラシア本部基地に来て、約1ヶ月が過ぎた頃の朝だった、、、。
気絶し、目覚めたのが午前4時、遅すぎる夕食を終えると、せっせと訓練室の掃除、そして、風呂。
着替えも済ませて全てが終わる頃には、7時前、食堂へ向かうアユム。
今日は軽めにしよう、数時間前の食事から、そんな事を思い、量は半分程度にしておいた。
10分もしない内に、「おはよう」と声を掛けて向かいの席に座るのは、
リンダ=グリンガム少佐、挨拶を交わすと、「今日は早いわね」、なんて聞いてくるものだから、昨日からの顛末を伝えるアユム。
あまり会話の無い食事が多いのだが、今日はグリンガムもそんなに忙しくは無いらしく、また同じ上官、この基地の監督者・カオル=レイバード中将に苦しむ者同士、話が弾み、微笑ましい光景と呼べるかもしれない。
「…グリンガム少佐は、、」
他愛ない話、
アユムが名前を呼んだ所で不意に塞き止められた。
「リンダでいいわよ、同じ上官に苦しんでいる者同士、それに実年齢だってさほど違わないって聞いてるし…」
アユムの見た目は、10歳前後に見えるか見えないかの、幼年であるものの、LU.LUになって、25年以上経ち、尚且つ人間だった頃の年齢を足せば、実年齢は30を越える。グリンガムはその事を知っていたようだ。おそらく、カオルにでも聞いたのだろう。
そこで、アユムはふと疑問に思った。そして、あろう事か、そのまま言葉として出てしまったのだ。
「リンダさんって、30代なんです、、か!?」
いい終えるか否か、アユムの眼前に突如現れた、中型のハンドガン…当然これにビビるアユムだが、少佐は不適な笑みを浮かべていたのだ。
「パラド君?…ウフフ、君も、私が30代には見えないって?40代に見えるってそう言いたいのかな?
それともまさか…50代に見えるとでも?」
目が笑っていなかった。
本気で撃ちそうだ、しかも、グリンガムが握るハンドガンの銃身には、スパイダー社のロゴである10本足の蜘蛛、、スパイダー社は、セデムターに対抗出来る武器を、統一軍と共同研究している会社…、そんな武器に、間違(まご)う事無き殺気を感じ取ったアユムは、なんとか、ひきつった笑顔で宥めている。
――が、殺気を多分に孕んだ笑みと共にして、銃口はそのままにAUTOへとタブを合わせるグリンガム少佐がいた。
「お、落ち着いて下さい」
「ええ、落ち着いてオートにしたわよ」
落ち着いてオートに、つまりは、全弾撃つつもりなのか?
「そ、そこじゃなくて、、あのここは射撃場じゃ…
「射撃場ならいいのね?」
考えるまでもない、完全に撃つつもりだ。
ここで、…いや、どこで撃たれても困る。アユムは必死に宥めようと努めるが、グリンガムに動じる様子はない。
「や…その…危ないですから…」
「大丈夫、LU.LUは銃弾くらいじゃ死なないんでしょ?」
「いや…俺みたいな、成り立てのLU.LUは、当たり所によったら死ぬ事もありますから、ね?」
「で?、誰が30代に見えないって?」
無慈悲な笑顔は崩れない。寧ろ、その凶悪さを増しているかのようで、この時のアユムには、大きな川が脳裏に見えていたのかもしれない。