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□断章・2,5
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――アユムの失言と思われるそれから、銃口を突き付けられて、どれくらいの時間が過ぎただろうか?
まだ僅かしか経っていないはずだが、アユムには永遠と思える程に濃縮した時間が流れていたに違いない。



「あ、あの…グリンガム…いえ、リンダ…さん、」


「何かしら?」


「あの…笑顔が笑ってない…」


「パラド君は面白い事を言うわね。笑った顔を笑顔、って言うのよ?」


「分かってますけど、笑顔が笑ってない…!」


無慈悲な笑顔に対抗する手段をアユムは持ち合わせては居なかった。、アユムは、ただただ弁明するしか無かったと言う。


この後、グリンガムが銃を納めるまでの約30分、アユムの必死の弁明は続き、そしてその後の食事中まで、アユムは生きた心地がしなかった。









――カオルとの訓練がなんとか一段落して訪れた昼食時、カオルは、やたらに不機嫌だったグリンガムを危惧しており、アユムは渋々その経緯を説明していた。




「なるほど、それであんなにグリンガムの機嫌が悪かった訳か…。
ま、それはお前が悪い。女は少なからず、胸と歳にコンプレックスを持つもんだ、こいつがな」

カオルの表情に同情の色はない、撃たれたら、まあしょうがない、と言っているようにも聞こえる。

「や、でも、あの反応は、本当に死ぬかと…あれ、スパイダー社のロゴがあったし…」

「反応」という言葉に反応したカオルは、「あ〜」と頭をポリポリ掻いて、何かを思い出しているらしい。アユムが尋ねると、あっさりと体験談を語ってくれた。
その笑顔の割に合わない体験談を…。


「いつだったか、、グリンガムに手伝ってもらってた仕事が中々片付かなくて、な…
「夜も更けてきたし、、」
っていいかけた所で…後ろから、問答無用で銃弾ブチ込まれたな…あれはちょっと痛かった。
…「休んでいい」って言おうとしただけなんだかな、こいつが」


アユムが絶句して固まったのは、言うまでもない。カオル曰く、
「ふけた」、
「としとった」、という類いの言葉は、どんな意味だろうと、グリンガムの前で決して言ってはならないらしい。

「俺は一言も言ってないのに…」
、戦々恐々としながら、ぽつりとこぼすアユムの表情は、下手をするとカオルとの訓練の時よりも、凄惨なものだったのかもしれない。



彼女ほど実年齢より老けて見える女性もあまりはいないだろう、それ故に、グリンガム自身もまた、病的なまでの劣等感<コンプレックス>を抱いているのだ。
リンダ=グリンガム少佐、サボりがモットーであるカオル=レイバードの補佐官を務める為、三等佐官でありながら事実上の基地監督者。
33歳独身、その仕事能力と柔らかな物腰で、基地の兵士や士官からの信頼は厚く、支持されているのだが、彼女には、決して言ってはならない禁句<タブー>があるという…。





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