光の鳥

□紀元前
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紀元前約6500万年程は、前になろうか。


この頃、地球と呼ばれるこの星は、現在よりもずっと太陽に近く、現在の金星より少し遠い程度の位置に存在していた。
この当時、後に金星の名で呼ばれる星は[月]と呼ばれ、いわゆる地球の衛星として、周回を続けている。


またこれよりずっと以前から、地上には3つの勢力が存在し、内2つは、大地の主導権を巡って争っていたようだ。


狼より産まれし、「蛇の者」と呼ばれる勢力、
そして、
「虫」と呼ばれる勢力との争いが数千万年規模に渡り、繰り広げられていた。


もっともこの頃‐紀元前約6500万年頃‐には、「蛇の者」と呼ばれる勢力が、その覇権をほぼ手中に治めており、虫なる者には、せいぜい、少数で移動する彼等の勢力を急襲する程度しか手は無く、それは、敗北を受け入れない最後の悪あがきといって差し支えの無いレベルだろう。


虫なる者共を退けた要因の1つとしては、蛇の者が、恐れ多き竜、後に「恐竜」と呼ばれる生態兵器を放っていた事だろう。
知能こそ低いものの、僅かな食料だけで巨大な体躯の体力と強靭さを支え、その分厚い皮膚は低温を保ち、その巨体から非常食としても重宝したという。それらは、日中の平均気温40℃前後、赤道付近では50℃近くにもなるという、過酷な環境下において、非常に適していた。

故に、その竜の行動にだけ任せていれば殆ど、虫なる者に、何もしなくてもいい、それほどに強力で強大な兵器だ。


彼等、「蛇の者」達が、それ以上に目指すのが、「生殖機能」を有し、尚且つ、自分達とは違う系譜でありながら、同等の知識を得られる存在の完成だった。
十数億年にも渡り、様々な生態実験が繰り返され、生まれる生物達、知能を維持させる為、「哺乳類」の項が生まれたが、肉体能力に依存させれば知能は低く、また、知能を依存させれば、肉体能力は低くなる。


様々な実験の中、自分達にとって、駒となり得る者達も彼等は、数十億年以上も前から創っていた。


人の体と、彼等と同等の能力を有する者、しかし、それらは、寿命を持たぬ故に、制作数は限られた。
また、寿命を持たぬ故に、交配の必要性は、少なくとも、子孫を作るためには不必要なため、それらは、精子も卵子も持たない。
理想の「人型」でありながら、有する力は、哺乳類のそれとは、かけ離れた存在となっていた。


彼等は、「ノルディック」と呼ばれる勢力の者を捕らえては、尚も研究を続けている。
ノルディックは、蛇の者よりも少し後に地上を住処にしており、争いを好まず、隠居をしている第3、というよりは第2の勢力である。
長寿故に繁殖能力こそ低いが、彼らはパンゲアの時分から様々な気候変異に対応しており、3M(メートル)を超える巨大な図体と1000年単位で生きる長寿命さえどうにかすれば、蛇の者達にとって、非常に理想的な生物像だったからだ。
‐適度に短い周期で死なれるほうが、蛇の者にとっての余計な知恵もつかず、それらを支配しようとする彼らには都合が良かった。‐

また、争いを好まぬ気質も、蛇の者達にとっては好都合だったと言えるだろう。


だが、彼らの特徴の1つである碧(あお)い瞳は不思議な瞳術を有しており、その能力(ちから)で隠れているのか、探し出す事は難しく、見つけても煙(けむ)に撒かれる事が多かったようだ。




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