微睡みの雫達

□双ツト無シ
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――7月もそろそろ終わり、暑さが本格化する頃の日曜日、藤ヶ丘高等学校では、夏休み前としての今年最後の休日に起きた出来事だった。


長い金の髪を束ねて歩くのは、高校生程度に見える少年、シオドラッド=ユーグフェリア。
シオドラッドは感じ取っていたのだ、その異様な気配を。明らかに意識して押さえつけているそれは、それでも尚、強烈な気配を漂わせている。

至高の“魔力”を持つ少年と、無双の“チカラ”を持つ者、それは必然だったのかもしれない―――






―交錯之章 ‐双ツト無シ‐―



午後2時に差し掛かる頃、昼の暑さもピークを迎えているせいか、休日と言えど、出歩く影は少ない。商店街の一角、雑貨を扱う店から出てきたのは、2人の少女、長い黒髪の清廉とした少女と、右サイドを三つ編みにしたセミロングの髪の明るそうな少女だ。

「やっぱり、外に出ると暑いですね」

「…暑いけど…、藤乃、ホントに行くの?」

腰まである長い髪が、自然に揺れる。藤乃、と呼ばれた長い髪の少女は、口元に手をやって微笑むと、「結さん、」と、顔を紅くさせているもう1人の少女に笑いかけた。
セミロングの少女・結も、藤乃の言おうとしている事は分かるのだが、気恥ずかしさがそれに勝っているのだ。

「愛美さんからの伝言、宮野さんに伝えないと」

「…だからって、バイト先まで押し掛けるなんて…」

「私達もお昼はまだですし、いいじゃないですか」


まだ決心が着いていないだろう結、藤乃は、「早くいかないと、宮野さんが帰ってしまいますよ?」、そう言って、結の背中をポン、と押した。
現在時刻、2時10分、気恥ずかしさは多分にあるのだが、確かに早く伝えないと、入れ違いになってしまう。歩き始めたはいいが、「あー」、「うー」、と言葉に成らない声が結からは絶えず洩れていた。




――それは、約1時間ほど前に遡(さかのぼ)る、、、

場所は商店街の文具店、藤乃、結と一緒にいる少女が、愛美だ。ノートを買いに来た愛美と、商店街を巡っていた文具店でたまたま会ったので、一緒に物色していたのだ。

ノートをレジへ持っていく愛美だが、それよりも早く、「先に外出て待ってるから、」、と慌てた様子で、結が藤乃を引っ張りながら、スタスタと行ったものだから、愛美からすれば、不思議だったに違いない。



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