世界に零れた月の雫

□壱章
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大地に降った月の欠片達とは別に、月の欠片によって構成された空中に浮かぶ二つの島、
レムリアとアトランティス、迷彩の結界が張られ、外からは見えないようになっている。
それぞれの島に、そびえる塔の幅は島とほぼ同等、高くそびえる塔の質量は、当然、島よりも大きい。

その二つの島、二つの塔こそが、“バベル”と呼ばれる、LU.LU.S達の、そしてCREARE'Sの本拠である。


元々、月にあった施設の見た目や作り<外装>が変わっただけで、LU.LU.Sの創造から訓練、生活居住を備える、CREARE'Sにとって要の施設と言えるだろう。



その一角、LU.LU.S infantia専用の施設では、今日もLU.LU.S候補達に訓練が課されていた。


「7番!さっさと進め!」


「は、はい」



重さ500kgの鎧を纏い、通るのがやっとという狭い道を歩いている。

教育担当官のゲキが飛ぶなか、いつものように遅れている幼い少女、個別番号311‐7番、彼女は、同期の中でも一番の落ちこぼれで、1年も保たずに消えると思われていた予想を覆し、1/3ほどが姿を消す同期の中でもなんとか生き残っていた。尚、彼女に限らず、infantiaの階級に名前で呼ばれる者はいない。


LU.LUとして産まれた際に、それまで人として生きた全ての記憶は、完全に消去される。
…当然、名前も例外ではない。infantiaの階級には選別、LU.LU.Sとしての適正を、本格的に判断するクラスでもあり、大半はここで落ちる為に、名前は必要ではない、という事らしい。

ここから、上の階級に上がる者‐LU.LU.S infantiaの終業者‐だけが、名前を与えられるのである。








来る日も来る日も体力向上の訓練と、座学を計15時間以上こなす日々。
座学は、頭にヘルメットのような装置を被るだけで、脳が直接覚えてくれる為、手間がかからない反面、強制的に覚えさせられる事、に対しての疲労が、自身で意識して覚える事よりも遥かに高い上、実際に納得し、記憶情報として定着させるまでに、思う以上に時間がかかってしまうのが難点と言えるだろうか。その為、脳や精神、肉体への負荷を考慮して、4年掛けて体得させる。




体力向上の訓練は、文字通りの体力向上だけでなく、発勁・法術と呼ばれるLU.LU.Sの基本戦闘に大きく関わる基礎の基礎を、身体に“刷り込む”目的も含まれており、infantia‐羅語で幼児の意‐という名の如くに、あらゆる面で、LU.LU.Sとしての根幹を作る為の土台作り、と言える。




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