世界に零れた月の雫
□漆章
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‐LU.LU.S licentia‐
licentia(リケンティア)は羅語で「免許」という意味であり、transitusを経て、戦闘に参加する力があると認められた者が、この位階に上がる。‐パラド=バーンは唯一の例外であった為、これには当たらない。‐
上位階[ascensio(アセンシオ)]、中位階[sublimatum(スブリマトゥム)]、に次ぐLU.LU.Sの下位階であるが、戦闘に最も参加する比率が高く、所属するLU.LU.Sが最も多いため、CREARE'Sの四肢、とでも言うべき位階である。
licentiaの中には、戦闘能力の優劣において、上から30名に限り序列が与えられている。
[LU.LU.S trenta(ルルス トレンタ)]、と呼ばれるその者達は、序列の順に1〜30までのナンバーが与えられ、生活面と権限においてのみ、licentiaではなく、中位階[sublimatum]と、ほぼ同等の待遇が成される他、中位階<sublimatum>に上がる者の大半は、trentaに選ばれている為、licentiaのLU.LU.Sにとっては、目標の1つでもある。
また、「trenta」は、その言葉の意味からか、ローマ数字で「30」という表記が用いられる事も、多々あるようだ。
尚、数年に一度(不定期に)開催される、CREARE'Sの集会において、ascensio、trentaへ上がる者が発表される。licentia〜sublimatumが全員参列を義務付けられており、quinque(クイーンクエ)が取り仕切っている。
―――
―西暦2092年―
統一政府が、仮政府から正式な政府となって十年余りが経っただろうか。
電子に包まれた世界が崩壊した[Luna vinctura]より約20年、人口は年々、回復しているが、失われた技術が廃れるには、充分な時間と言える。
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―第漆章 ‐イーツ・イストは謎のまま‐―
「―――以上を以て、閉会とする。各自、努々(ゆめゆめ)忘れぬように、全ては、我らが総統<マスター>、セリュール=デルニエ閣下に導かれていると言う事を!」
quinque ベラ=カーンの格式めいた言葉で締め括られたLU.LU.Sの集会、インド洋東、遥か上空に浮かぶ島レムリア、島よりも圧倒的に体積の大きくそびえるその塔、
ベラが去り、quinqueの姿が完全に見えなくなると、圧迫された空気は弾け、所々で、雑談で満たされていた。
「…おい、あいつだろ、パラドってヤツ…」
「あぁ、licentiaに上がっていきなりtrentaかよ…」
「なんでもtransitusから戦闘に参加してたんだとよ」
「あ、俺も聞いた事あるぜ、、なんでもユーラシアの初陣で10体以上のセデムターを仕止めたらしいぜ」
「…信じらんない…」
「僕はレイバード様の隠し子だって聞いたよ」
「なんだよそれ、LU.LU.Sに繁殖能力は無いだろ、」
……パラド=バーンなる者、についての憶測が飛び交う中、当の本人は、当然というべきか、居心地が悪そうだ。
「………」
「よぉ!大人気じゃねぇか」
後ろから肩を組んで、アユムに絡んできたのは、同じく今回、trentaに任命されたベイルだった。
「…ああ、久しぶり…だな」
「おう。
俺が、NO.29、エギルが、NO.25、、
で、お前がNO.18……同期で一番だった俺をなんで抜いてんだよ!」
「初っぱなから絡んでやるな」
後ろから至極冷静に口を挟むエギルの姿、
どちらも、身長や体格が大きくなっているが、一目で判る程に、元は変わっていないのだ、と少しばかりの懐かしさを感じて、思わず溜め息を漏らすアユムだった。