朱の烙印ーA cinnabar red brandー

□The opening of the thingーことの始まりー
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――12年前――


「……あれ?おかーさん?」


オレが友達の家から帰ると家の中は真っ暗だった。
4時半だというのにカーテンが閉められていた。


「おかーさん?」


ギシ……

床が鳴る。
聞き慣れない音。

しかし5歳のオレは恐怖など抱かずに足を進めていく。

と、誰かの啜り泣く声が聞こえてきた。
その声は直ぐに母さんだと気づいた。


「おかーさん、夕焼け空がキレイだったよ」


母さんを励まそうと開いたカーテン。

そこには――


「……お人形さん、壊れちゃったの?」


オレは、そう言った。
母親は泣き崩れた。

夕陽が部屋を照らし出す。

部屋の白い壁が朱色に染まっていた。

そして――


「おと……さ……ん?」


オレは総てを理解した。

人形では無く、バラバラの肉の塊と化した父がソコにはいた――


「うぁ……あああ……」


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