朱の烙印ーA cinnabar red brandー

□Night when I seem to be awfully numbー酷く凍えそうな夜ー
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恋という芽が出る事は無かった。


川田は階段から落ちた、そう学院長が説明をした。

落とされたのかも知れない。
自ら足を踏み外したのかも知れない。

目撃者は誰もいない――


「わたしが……もう少し早くハツリちゃんを見付けてあげてたら……」


ジャージに着替えた野嶋が呟いた。


「……自分を責めるのはやめろよ」
「姫路くん、わたし……」


抱き付いて来た野嶋を受け止める。
人が死ぬと、人は変わる。

野嶋も気が動転していたんだな。
じゃなきゃ、あんな事――


「姫路なんだろ?」
「玉子?」
「川田と出て行くの見たぜ」


玉子の言葉に背筋が凍る。


「オレが殺ったって言いたいのか?」
「……さっきだって、川田さんの事を捜してたよね……」
「本当か、ミドリ?」
「うん」


二人の視線が突き刺さる。


「それは告白の……」
「告白?お前が川田と付き合えるワケないだろ?夢を見るのも――……」


玉子の言葉にハッとする。

“何でオレなんだ?”と――



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