朱の烙印ーA cinnabar red brandー

□I knew you all the timeーずっと君を知っていたー
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眠れない日が何日も続いた。

体育館の二階から見る空、今夜も雨だ。


「はあ……」


大切な人が消えてゆく――

何故、人は人を殺すのだろう……
そもそも本当に人なのかさえ見失う。

同じように生まれたじゃねェか!
“何か”が人を変えていく。
分かってる。
全く変わらない人なんかいねェし。

だからってよォ……


「くそっ……」


涙が止まらない。
悔しさじゃない。
怒りでもない……“虚無感”


「幸せそうだったね、山村先輩」


野嶋が言った。
コイツは、こんな時に何を言ってるんだよ……


「お前――」
「わたしがこの前、話した事……覚えてる?」
「この前?」
「……お父さんの話」


“わたしね、お父さんがいないの”

“わたしが殺したの……薄暗い部屋、血の匂い……”

この話だよな?
むしろ、これしか心当たりが無い。


「それが何?」
「思い出したんだ、姫路くんの怯えた顔を見て」
「何を――」
「姫路マサト、知ってる?」


オヤジの名前だ。
オレは小さく頷く。


「やっぱり、そうなんだ」


野嶋がニヤリと笑った直後、唇が重なった。
キス……?


「何すん――」
「心配しないで。パパが犯した罪は、わたしが償うから」
「償うって……罪ってなんだよ!」
「知らなくて良いよ」


野嶋は寂しそうに笑った。


「野嶋……」
「姫路くんはわたしが守るから」
「守るってなんだよ」
「もうすぐ終わる。そしたら――」


電気が点滅する。


「!」


野嶋の後ろに見えるアレは何だ?

人間の手?

違う、アレは――




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