読切

□雪桜
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窓から見えるのは、満開の桜。
風が吹くたびに綺麗に、儚く散っていく。
それを自然と追う、僕がいる。
動けない。
見ているだけ――


ハルキ。
それが僕の名前。
僕は……もうすぐ死んでしまう。
次に風が吹いたその時に――


「ハルキ。ボーッとして、どうしたの?」
「……」
「そうだよね。春だもん、眠くなるよね」


そう言って、僕の彼女は右手で頬に触れる。
彼女の手はいつも温かい。


「僕……」
「なに?」
「ルカが好き……だ」


2週間前と同じ告白。
違うのは、“最期”ただそれだけ。


「知ってるよ。だから、私達――」
「さよなら」
「え?」
「好きだ……った。今はもう……違うから」


好き。
過去じゃない。
まだモノクロなんかじゃない。
けど、落ちそうなのは……事実だから。


「ハルキは世界一、嘘つきだね」
「嘘なんかじゃ――」
「笑顔で泣いてるじゃない!」
「泣いてないよ」


そう、泣いているのはルカ……君だよ。


「ハルキの嘘つき……っ」


泣きながら抱きついてきた彼女の手は初めて冷たかった。

――僕は気付く。


「ルカ……」
「好きなのにっ……こんなに……好き……なのに!」


透けていく彼女を力強く抱き締める。
“離さない”心で強く叫びながら――


「……ハルキが好き」


ひらり……
風が最後の花びらを連れて行く。
手を伸ばしても掴めない。

泣いてる彼女を笑顔に変えられない――


「ルカ……」


愛しい彼女の最期は、涙で滲んでいた。
どうして、気付かなかったんだろう……

雲一つない空。
見上げれば、桜の木。
その蕾が花ひらく美しさに僕は恋に落ちた。

幻影は涙と共に消えていく。

もう……
木に花びらは何もない――





雪桜....END....

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