読切

□すれ違い通信
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ただ今、絶賛片思い中。
告白はしない。
見てるだけでいい。

私は所謂、ブスだ。
しかも何の取り柄もない。
この歳になるまで何度も告白したが、結果は散々だった。
その度に傷付いた。
自分でも傷つけた。
“もう恋なんてしない”心に決めたのに長続きしない。
だから、片思いのままでいる決意をした。

出会いは電車の中。
ベタだけど、ぶつかった時に落ちたスマホを拾ってくれたのが彼だった。
顔を上げたタイミングでの一目惚れ。

「あ、ありがとう……ございます」
私は顔をまじまじと見られる前に逃げるように去った。
背中に「どういたしまして」という彼の声を聞きながら。
今でも鮮明に覚えてる。
この日から満員電車の中で彼を捜すようになった。
目で追うようになった。
何度も笑顔を見た。
……彼女はいるのかな?
私には関係ない、希望を打ち消す。
そんな毎日の繰り返し。
季節が移り変わっても関係は変わらないと思っていた。
しかし──

「久しぶりだね、同じ車内」

彼から話し掛けてきた。
“私じゃない”
期待厳禁。
仮に私だとしても顔を見られたら終わり……──

「いつも探して目で追ってたんだ、可愛いなって」

“可愛い”に思わず顔を上げ、周りを見渡す。
私の周りは見事に男性しかいなかった。

「君のことだよ」
「可愛くなんか──」
「それは自分評価?」
「そう……ですが」
「評価するのは自分じゃないよ」
「今まで、周りからも言われてきました」
「その人達が見る目ないんじゃない?」
「そんなこと……」
「あの日、“ありがとうございます”って言った君の笑顔が忘れられなくて」

私は自分がその時、笑顔だったなんて知らなかった。

「いつも話し掛けたかったんだけど、こう満員電車だとね……でも、キミを見付けてこっち向いてるのを都合よく、“俺を見てくれてる”って勘違いしたりさ」
「……私も──」

言い掛けたその瞬間、電車が急停車。
私は彼に支えられた。
高鳴る鼓動は、二人同じ。

「明日もまた、君を探すから目が合ったら笑ってよ」

自信がないけど、私は小さく頷いた。
私もきっと彼を捜すだろう。


数年後、彼に可愛いと言われ続けた私はみんなから
「可愛い」
「綺麗になった」
と言われるようになった。
好きな彼に言われ続けたからかな。

ブスだった私は明日、最高に綺麗になります。




2013.05.14

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