読切

□梅雨明け
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雨は嫌い。
あたしの髪を乱すから。

大好きなあの人に
くしゃくしゃされたあの日の記憶を湿らせていくから。
 
滲んで流れて
干からびる
短い大恋愛


雨は嫌い。
あたしの涙を濁すから。

些細なことが我慢できなくて
流れた涙
止まらない言葉
終わらない雨
涙と重なっていく


滲んで流れて
干からびる
長い旅路の一瞬


雨は嫌い。
あたしを濡らすから。

差し伸べてくれる手は
いくら待っても
現れない

止まない雨は
あたしの心までも湿らせる
身も心もずぶ濡れになって
溺れてしまう、そう思った時


空に心に光が差す
手を伸ばせば届く距離に、ずぶ濡れのあたし

彼女に背を向け
あたしは歩き出す
背中越しに聞こえる雨音

静かに生暖かい風に書き消されていく──






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