読切

□曇り空
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誰もいない部屋
綺麗な真新しい匂いが広がる
物音ひとつ、しない

じいちゃんとばあちゃんが
賑やかに迎えてくれた部屋
玄関に二人分の靴
私の靴

汚れはすぐ
ばあちゃんが掃除した
二人の声がいつも聞こえていた


ばあちゃんが家を空けた
賑やかな声は一人の声と
テレビからの声
寂しさと
面影が重なった

気付けば、慣れがあった
それに気付くとまた寂しさが増した


ばあちゃんが姿は変わったけれど
帰ってきた
辛いけど、悲しいけれど
どこかホッとした

賑やかさはないけれど
じいちゃんとばあちゃんがまた
二人で迎えてくれた

漸く、また慣れがきた
今度は、じいちゃんが家をあける
静かすぎる部屋
玄関に靴はあるのに誰もいない

静かに
ばあちゃんはじいちゃんが戻るのを待ってるんだよね?
私も同じだよ
元気になって
またお経唱えたり
座ってご飯食べたり
買い物頼んだりするんでしょ?
今は少し疲れただけだよね?


静かすぎるのは……
靴があっても
いないなんて
絶対に嫌だから

今は信じて待とう
涙を流す私は弱いわけじゃない
自分に言い聞かせる
弱さを吐き出してるだけ──

──会えない日々に負けてはいけない──!




〈曇り空〉


(2022.09.09)

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